2016 Fiscal Year Annual Research Report
膨張宇宙におけるホログラフィー原理の検証
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
16H01095
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浦川 優子 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (80580555)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホログラフィー原理 / インフレーション / 初期揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲージ/重力対応は、非摂動的現象の解析及び量子重力理論の構築などの観点から大きな期待が寄せられ、負の宇宙項をもつ反ドジッター時空において、これまで盛んに研究が行われてきた。本研究の目的は、非摂動的な重力現象の理解を深める上で大きな可能性を秘めたゲージ/重力対応の妥当性及びその有用性を、膨張宇宙において検証することである。 とりわけ本研究では、宇宙の構造の起源となる原始揺らぎが生成されたと考えられる宇宙初期の加速膨張期であるインフレーション宇宙の、ゲージ/重力対応に基づく理解の構築に取り組んでいる。原始揺らぎの主成分は、曲率揺らぎと呼ばれる摂動量によって記述される。初年度である平成28年度は、曲率揺らぎの基本的な性質である、曲率揺らぎの時間に関する保存則の成立条件の、ゲージ/重力対応に基づく理解の構築に努めた。 ゲージ/重力対応は、(d+1)次元における重力理論とd次元における重力を含まない理論との間に非自明な双対関係を与える。重力を含む場の理論に基づく従来の計算では、曲率揺らぎは大スケールにおいて、時間変化せずその振幅は時間に関して保存することが示されている。曲率揺らぎの保存則は、一般相対性理論に代表される(多くの)重力理論の基本的な性質である一般共変性の帰結であることが知られている。従って、双対な重力を含まない場の理論においても、その基本的な性質により、曲率揺らぎの保存則が保証されるのではないかと予想される。この点について検証した。 双対な場の理論においては、時間発展はくりこみ群のフローによって記述される。くりこみ群方程式を解くことにより、双対な場の理論において曲率揺らぎの保存則を検証した。その結果、曲率揺らぎの保存則が成立するためには、双対な場の理論がくりこみ可能性と局所性を保持している必要があることがわかった。この結果は、当初の予想を裏付けるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、インフレーション宇宙におけるゲージ/重力対応の妥当性に関しての理解を深めるため、曲率揺らぎの保存則の成立条件を、双対な場の理論において検証した。この研究は、バルセロナ大学Jaume Garriga教授との共同研究として遂行した。
その結果、曲率揺らぎの保存則が成立するためには、双対な場の理論がくりこみ可能性と局所性を保持している必要があることがわかった。この成果は、査読付論文Journal of Cosmology and Astrophysicsに発表し、また数件の国際会議において発表をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に得られた成果をもとに、平成29年度はゲージ/重力対応に基づくインフレーション模型の構築、及びその観測的整合性の検証に取り組んでいく。
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Research Products
(9 results)