2017 Fiscal Year Annual Research Report
Cell competition system during multistep tumorigenesis of colon cancer
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
17H05616
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大島 正伸 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (40324610)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大腸がん / オルガノイド / ドライバー遺伝子 / 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸がん細胞は遺伝子変異の段階的な蓄積により悪性化形質を獲得すると考えられ、その概念は「多段階発がん」説として知られている。一方で、「細胞競合」とは、遺伝子変異などにより周囲と異なる形質を獲得した細胞が排除されるシステムである。本研究は、「多段階発がん」と「細胞競合」がどのように制御されて発がんに至るのかを明らかにすることを目的として推進する。平成29年度は、ヒトの大腸がん発生と悪性化に関与するApc (A), K-ras (K), Tgfbr2 (T), Trp53 (P)の4種類の遺伝子変異を段階的に導入したマウス腸管腫瘍から樹立した3次元オルガノイド培養細胞を用いて、以下の実験を実施した。
1. 転移能を獲得していないA、AP、AT、AKオルガノイド、および転移能を獲得したAKTPオルガノイド細胞をそれぞれTdTomato(赤色蛍光)、Venus(緑色蛍光)で標識した細胞材料を作成した。これらを用いて、2種類の異なる形質のオルガノイドを混合して培養実験を実施したが、オルガノイドどうしの効率良い融合現象が認められなかったため、オルガノイド細胞を酵素的に単離して混合する方法に変更し、異なる遺伝子型の細胞からなるオルガノイド形成を確認した。今後、この方法によりin vitro細胞競合実験を進める。
2. 非転移性オルガノイドと転移能の高いAKTPオルガノイドを混合して、マウス脾臓に移植し、肝転移巣形成におけるin vivo細胞競合実験を実施した。その結果、転移性の形質を獲得していないオルガノイドがAKTPと共存すると、AKTP細胞との混在型の転移巣を低頻度ながら形成する現象を観察した。この結果は、異なる形質の腫瘍細胞どうしの相互作用が、本来の細胞形質に影響を与える可能性を示しており、細胞競合機構の理解につながると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、異なるドライバー遺伝子変異を蓄積させた各種マウス腸管腫瘍由来オルガノイド細胞を混合し、細胞競合実験を実施する。その際に、それぞれの細胞を識別するため、TdToamatoおよびVenusなどによる蛍光標識が必要であり、平成29年度中に当初の計画にしたがって、すべての使用する遺伝子型オルガノイドの蛍光標識を実施した。
これを用いた、マトリゲル中でのin vitroにおける細胞競合実験実施を実施する際に、2種類の異なる遺伝子型のオルガノイドを混合培養したが、オルガノイドどうしの融合効率が極めて低いことが明らかになった。この技術的な困難を克服するため、細胞調製法の検討を行った結果、オルガノイドを酵素的に処理し、単離した細胞を混在した後にオルガノイドを形成させるよって、キメラオルガノイドを作成することが可能である結果を得た。今後はこの方法によってin vitro解析を推進する。
一方で、個体レベルでの細胞競合研究においては、計画にしたがって2種類の異なる遺伝子型のオルガノイドを混合し、マウス脾臓移植を行った結果、悪性度の低い腫瘍細胞の方が移植巣における生存率が低いことが明らかとなった。今後、そこに細胞競合現象が関与しているかについて解析を行う。また、転移性を獲得していない腫瘍オルガノイドが、転移性の高いオルガノイドと共存した場合に、低頻度ながら転移巣を形成する新しい現象を見出した。これは、異なる形質の細胞間の相互作用が本来の細胞形質に変化を与えたことが理由と思われ、この現象の解明は細胞競合機構の理解に貢献すると考えられた。以上のように、本研究は計画にそって推進されており、これまでに予想外の実験結果も得られていることから、研究成果からは新しい概念の確立が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究実績および進捗状況を受けて、平成30年度は以下の研究を推進する。 in vitro実験では、悪性度の高いオルガノイド由来細胞の頻度を低くした細胞混合実験を継続して実施し、蛍光顕微鏡下における経時的な解析を行う。とくに、混合培養オルガノイドが形成された後で、それぞれの形質の細胞増殖率の変化をEdU標識によって解析する。さらに異なる形質の細胞が接している領域に着目し、細胞競合による排除またはクローン拡大による増殖がどのように誘導あるいは制御されるか観察する。 in vivo実験では、平成29年度に引き続き混合オルガノイドの移植実験を実施する。移植した原発巣および肝臓への転移巣のそれぞれにおいて経時的に組織を採取し、それぞれの細胞増殖率の変化をBrdUまたはKi67標識によって解析し、さらに細胞死の状況をApoTag染色により解析する。とくに、異なる形質を有する細胞に囲まれた腫瘍細胞の生存と増殖について組織学的に観察する。 以上の研究により、発がん過程における細胞競合メカニズムの制御機構と、その変化による発がん促進の可能性について明らかにする。
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[Journal Article] Combined mutation of Apc, Kras and Tgfbr2 effectively drives metastasis of intestinal cancer.2018
Author(s)
Sakai E, Nakayama M, Oshima H, Kouyama Y, Niida A, Fujii S, Ochiai A, Nakayama KI, Mimori K, Suzuki Y, Hong CP, Ock CY, Kim SJ, Oshima M.
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Journal Title
Cancer Research
Volume: 78
Pages: 1334-1346
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Intestinal cancer progression by mutant p53 through the acquisition of invasiveness associated with complex glandular formation.2017
Author(s)
Nakayama M, Sakai E, Echizen K, Yamada Y, Oshima H, Han TS, Ohki R, Fujii F, Ochiai A, Robine S, Voon DC, Tanaka T, Taketo MM, Oshima M.
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Journal Title
Oncogene
Volume: 36
Pages: 5885-5896
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Book] リンパ学2017
Author(s)
大島浩子,越前佳奈恵,中山瑞穂,大島正伸
Total Pages
5
Publisher
日本リンパ学会
ISBN
0910-4186
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[Book] 特集 胃癌2017
Author(s)
大島浩子,越前佳奈恵,中山瑞穂,大島正伸
Total Pages
6
Publisher
日本臨床社
ISBN
0047-1852
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