2018 Fiscal Year Annual Research Report
Cosmic acceleration probed with Subaru HSC cosmic shear analysis
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
18H04348
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日影 千秋 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (00623555)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダークエネルギー / ダークマター / 重力レンズ / 宇宙の大規模構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
すばるハイパー・シュプリーム・カム(HSC)の第1期銀河撮像カタログを用いて、宇宙大規模構造による弱い重力レンズ効果「コズミックシア」の測定を行った。銀河の測光情報から推定した赤方偏移をもとに銀河サンプルを4つに分けたトモグラフィック解析を行い、ダークマターを含む宇宙の全物質分布が数10億光年にわたって時間成長する様子を調べた。それをもとに現在の宇宙の構造の凸凹度合いを表す物理量S8の値を誤差3.6%の世界最高水準の精度で測定することに成功した。用いたHSCのデータは全計画の11%程度にも関わらず、欧州主導のKiDS計画や米国主導のDES計画と同等以上の精度での測定を行うことができた。宇宙の標準模型ΛCDMのもとで、プランク衛星による宇宙マイクロ波背景放射の結果と比較した結果、今回HSCの観測から得られたS8の値と明確な矛盾こそないものの2σ程度低い値であった。KiDSやDESも同様の結果を示していることから、今回の結果は、ΛCDMの綻びを示している可能性、例えば、ダークエネルギーの時間進化や一般相対性理論が宇宙論的スケールでの修正が必要である可能性があり、今後さらなる精密な検証が必要である。本研究成果は日本天文学会欧文研究報告誌(PASJ)に投稿し、出版されることが決定した。また本研究成果は、オックスフォード大学、インペリアルカレッジロンドン、スタンフォード大学、南カリフォルニア大学でのセミナー、カリフォルニア大学バークレー校での研究会、京都大学での国際会議、すばるユーザーズミーティングなど、さまざまな場所で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すばるHSCデータを使った初めての宇宙論解析を行い、その成果を論文として投稿、出版が決定した。宇宙の全物質の構造の成長を調べるとともに、世界最高級の精度で現在の宇宙の凸凹度合いを表す物理量を3.6%の精度で測定することに成功した。得られた結果は非常にエキサイティングなもので、プランク衛星との食い違いが明らかになれば、宇宙の標準模型であるΛCDMの綻びを示すこととなり、ダークマターやダークエネルギーの正体解明にもつながる。本研究の成果について記者会見を行い、全国紙、科学雑誌、海外のメディアでも報道された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらなる精度でプランク衛星との食い違いをはっきりと調べるために、銀河の形状測定や測光的赤方偏移による系統誤差の改善、より多くの情報を引き出すための解析方法の確立に取り組む。またプランク衛星との食い違いの原因として、一般相対性理論の宇宙論的スケールでの綻びがないか、主成分分析法を用いて調べる。
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