2018 Fiscal Year Annual Research Report
高速2次元測温法から探る核マントル物質の融解現象
Publicly Offered Research
Project Area | Interaction and Coevolution of the Core and Mantle: Toward Integrated Deep Earth Science |
Project/Area Number |
18H04366
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新名 良介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (00769812)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地球内部 / マントル / 地球核 / 高温高圧実験 / ダイヤモンドアンビルセル / 融解 / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
核マントル物質の融解現象を理解するための実験的研究を推進した。本年度は当初の計画どおり、技術開発を行いつつ、地球を構成する物質の融点を高圧力下で決定する実験を行った。計画通り、高圧下試料温度をこれまでにない高速で決定する据置型システムを構築することができた。ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧力下融解実験において、従来システムではおよそ1秒ごとに1つの1次元温度プロファイルしか得られなかったところ、数10ミリ秒ごとにプロファイルを得られるようになった。さらに新しい手法である内部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いることで、地球核の進化を支配する純鉄の融点を、これまで報告されたことのない高い圧力下で決定することができた。地球核には鉄の他にニッケルや軽元素が含まれていると考えられているが、その種類と量は長年にわたって謎とされている。本年度行われた実験から、炭素、ケイ素、酸素、硫黄、窒素が鉄の高圧下相関係に与える影響が明らかになった。得られた結果から、軽元素はどれも単独で存在しておらず、核には複数の軽元素が含まれていることが強く示唆された。また、マントル物質を模したモデル系における融解相関係をマントル最下部条件まで決定した。本年度の研究成果としては、国際学術誌に7本(印刷中含む)、国内学術誌に2本の論文が公開された。また、国際学会において7件(共著含む)、国内学会において3件(招待講演含む)の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において本年度は高温高圧実験システムの構築に費やす予定であったが、共同研究者の協力もあり、計画していた以上の早さで構築が完了した。具体的には、高速度据置型測温システムが早期に完成し、期待していたとおり、数10ミリ秒ごとに加熱中温度プロファイルを取得することが達成された。続いて高温高圧発生装置であるレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルや、内部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルとの組み合わせもスムーズに進んだ。その結果、目的としていた実験を数多く前倒しで行うことができ、特に地球核物質に関して目覚ましい進展が得られた。新しく構築したシステムを用いることで、純鉄をはじめ、鉄―軽元素系(炭素、ケイ素、酸素、硫黄、窒素)、ニッケルが含まれる系において、核に相当する超高圧力下の相関係が次々と明らかになった。マントル物質の融解現象に関しても成果を得ることができた。順調に計画が進展したことは研究成果にも現れており、国際学術誌に7本の査読付き論文を発表することができた。以上のことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず次の目標である携行型高速測温システムの早期構築を目指す。ダイヤモンドアンビルセル用光学系の試料観察光路上に高速スキャンが可能なミラーを挿入し、ダイクロイックミラーと狭帯域フィルターを組み合わせた軽量分光器へ試料観察光を導入する。ミラーをスキャンしながら高感度高速光検出器を用いて各波長の強度を測定し、温度計算ソフトウェアへ入力して温度を決定する。 また、マントル物質に対しても内部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルを応用し、物質の融点決定を目指す。核物質とは異なり、マントル物質は絶縁体であり、加熱ヒーター内に試料を封入する必要がある。ダイヤモンドアンビルセルの微小な試料室に適合するマイクロヒーターの開発を行う。試料をマイクロヒーターへ封入し、核マントル境界相当の圧力において瞬間加熱と高速観察を行う。高速観察には本年度構築したシステムを用いる。マントル物質の融点を決定し、軽元素の融点降下量から見積もられた核マントル境界の最大温度と比較することでマントル最下部に大規模溶融が生じうるか否かを明らかにする。
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Research Products
(19 results)