2018 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫応答と脂質代謝の連携分子基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Quality of lipids in biological systems |
Project/Area Number |
18H04666
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 健介 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60229812)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Toll様受容体 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸や脂質などの栄養素が欠乏すると、個体レベルでも、細胞レベルでも免疫応答が低下する。このことからも、代謝と免疫応答は密接に連携していることが分かる。この連携の分子基盤において、代謝センサーmammalian target of rapamycin (mTOR)と自然免疫センサーとの連携の重要性が明らかになりつつある。mTORはmTORC1、mTORC2という2つの複合体を形成する。mTORC1はリソソームに局在するアミノ酸のセンサーであると同時に、Toll-like Receptor (TLR)によるI型インターフェロン(Interferon, IFN)産生を誘導するシグナル伝達分子としても機能する。一方、mTORC2については、代謝センサーとしての役割さえも不明である。我々は既に、mTORC2が2重鎖RNAセンサーTLR3のマスター制御因子であるという結果を得ている。本研究において、mTORC2の代謝センサー、脂肪酸センサーとしての機能を明らかにし、脂質代謝と自然免疫応答の連携に関与する分子基盤を解明することを目指す。本年度において、mTORC2が活性化されたTLR3と会合し、TLR3の細胞内移行、炎症性サイトカイン産生、I型インターフェロン産生すべてに関与していること、すなわちTLR3応答のマスター制御因子として機能していることを報告している。また、mTORC2によって活性化されたTLR3が細胞内移行して、mTORC1と会合し、I型インターフェロン産生を誘導することから、TLR3応答におけるmTORC1、mTORC2の関係についても報告した。これらの結果は、自然免疫の分野ばかりでなく、mTORの分野においても興味深い知見であると我々は考えている。今後は、mTORC2の代謝センサーとしての役割について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、TLR3の応答において、TLR3がマスター制御因子として機能していることを報告することができた。mTORC1については、TLRの応答においてI型インターフェロン産生に関与していることが報告されてきたが、mTORC2についてはほとんどわかっていない。また、mTORC1とmTORC2の関係についても、不明な点が多い。我々の結果は、mTORC2がTLR3応答のマスター制御因子として、mTORC1依存性のI型インターフェロン産生に関与していることを示しており、mTORC1、mTORC2の新たな関係を示した点は、自然免疫の分野を超えたインパクトを持つと我々は考えている。この点において、順調に研究が進展しているといえる。今後は、TLR3応答において、脂質代謝の役割について解析を進める予定である。mTORC1については、アミノ酸やコレステロールなど代謝産物のセンシングに関与していることが報告されてきたが、mTORC2についてはほとんど報告がない。代謝センサーかどうかもわからない。我々は、mTORC2が代謝産物のセンシング、特に脂質代謝産物のセンシングに関与している可能性を考えており、その点についての検討を進めてゆく。具体的には、脂質代謝に関与する分子群のTLR3応答における必要性を検討してゆく。必要と分かった分子群については、mTORC2との関係を検討する。これらの解析を通して、TLR3応答と脂質代謝の関係を分子レベルで理解することを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度においては、TLR3応答と脂質代謝との関係を検討する。例えば、アミノ酸代謝については、代謝産物であるアミノ酸をmTORC1がモニターするとともに、TLR応答によるI型インターフェロン産生に関与する事で、自然免疫系と代謝系の連携に貢献している。一方、mTORC2については、そのような報告はなく、ほとんど不明である。Growth factorの下流でmTORC2が活性化され、細胞骨格の活性化などに関与していることが知られている程度である。われわれの本年度の結果において、mTORC2が自然免疫応答に深く関与していることが明らかになったが、依然として、代謝との関係については、ほとんどわかっていない。本年度において、TLR3応答における、mTORC2と脂質代謝との関係を検討する。このような報告はなく、ユニークな観点からの解析といえる。具体的には、脂質代謝に関与する分子群にCRISPR/CAS9の手法で機能低下型遺伝子変異を導入し、その変異のTLR3応答への影響を検討する。これにより脂質代謝とTLR3との関係を明らかにする。脂質代謝が変化したときに、TLR3応答が影響されるという結果が出たら、脂質代謝が、TLR3のシグナル伝達経路のどこに影響しているのか検討する。特に、mTORC2の上流か、下流かについて検討する。さらに脂質代謝にかかわる酵素の阻害剤についてもTLR3応答への影響を検討する。これらの解析を通して、TLR3と脂質代謝の関係、その関係におけるmTORC2の関与を検討する。
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Research Products
(7 results)