2020 Fiscal Year Annual Research Report
Novel topological materials designed by non-Hermitian band structures
Publicly Offered Research
Project Area | Discrete Geometric Analysis for Materials Design |
Project/Area Number |
20H04627
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉田 恒也 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50733078)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トポロジカルメタマテリアル / 非エルミート系 / 開放量子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(i)電気回路におけるミラー表皮効果; (ii)開放量子系における分数量子ホール状態 (iii)平衡強相関系における例外点の研究 (iv)トポロジカル熱メタマテリアルの提案を行った。 (i)の「電気回路におけるミラー表皮効果」の研究では、鏡映対称性に保護された新しい非エルミート表皮効果を提案し、その後、トポロジカル電気回路での発現を議論した。この際、電圧のノード依存性を測定するとミラー表皮効果が観測できることを理論的に提案した。 (ii)の「開放量子系における分数量子ホール状態」の研究では、これまでの研究で無視される場合が多かった量子ジャンプの効果を取り入れ、トポロジカルな構造を解析した。その結果、二体ロスのある系では量子ジャンプがあるもとでも、トポロジカルな構造は保たれることを明らかにした。 (iii)の「平衡強相関系における例外点の研究」ではこれまで、議論されてきた一電子励起スペクトルの他に、スピン励起などの多体のスペクトルに対する対称性の効果を解析した。その結果、カイラル対称な系では一電子励起スペクトルとスピン励起スペクトルで対称性による拘束条件が異なるため、例外点の構造が異なることを明らかにした。 (iv)ではトポロジカル熱メタマテリアルという新しいトポロジカル現象の舞台を開拓し、エッジ状態の発現のため試料の端では特有の熱伝導現象が見られることを明らかにした。また、バネ-質点模型において回転対称性に保護されたトポロジカルバンド縮退の発現を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(i)電気回路における表皮効果の解析では、鏡映対称性に保護された非エルミート・トポロジーが新しい表皮効果を引き起こすことを明らかにした。また、電子回路での実装にむけた議論を行った。具体的には該当する系がアンプを用いることで実現可能であることを明らかにし、電圧のノード依存性を測定することでミラー表皮効果の観測が可能であることを提案した [T. Yoshida et al., PRR (2020)]。 (ii)開放量子系における非エルミート・トポロジーでは擬スピンチャーン数という新しいトポロジカル不変量を導入した。このトポロジカル不変量をもとに二体ロスのある系では、量子ジャンプがあってもトポロジカルな構造は保たれることを明らかにした[T. Yoshida et al., PRR (2020)]。同様のアプローチで一次元の対称性に保護された非エルミート・トポロジカル相が特徴づけ可能であることを明らかにした。 (iii)平衡強相関系における例外点の研究では、一粒子励起スペクトルで発現する例外点のトポロジーを解析し、その分類表を構築した[T. Yoshida et al., PTEP (2020)]。また、スピン励起などの二粒子グリーン関数においては対称性による拘束条件が一粒子励起スペクトルのものと異なるため、例外点のトポロジーも変化することを明らかにした[R. Rausch et al., New. J Phys. (2021)]。 以上の成果は計画の当初におおむね予想できたものであるが、それにくわえて(iv)トポロジカル熱メタマテリアルという新しいトポロジカル物理の舞台を開拓した。さらに本年度には、招待論文を上梓することができた。これらの理由から当初想定していた以上の成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(a) 開放量子系でのトポロジカル分類学に対する強相関効果:本年度で開放量子系の解析に必要な数値計算の技術を習得することができた。この技術を生かして、開放量子系特有のトポロジーである点ギャップトポロジーに対する強相関効果を解析したい。特に、エルミート系では自由粒子系でのトポロジカル分類学が強相関効果によって変更をうけることが報告されているが、非エルミート系特有のトポロジーに対して同様の現象が見えるかどうかを具体的なモデルを解析することで明らかにしたい。また、解析の際には数値的対角化を用い、計算が大規模になるようであれば物性研究所などの計算機クラスターで計算を行う。 (b)トポロジカル近藤絶縁体における例外点:トポロジカル近藤絶縁体として知られるSmB6は強相関化合物であり、試料の表面にギャップレス状態を有する。このため、強相関効果によって平衡状態でも例外点がみられることが期待される。本研究ではSmB6と同じトポロジーを有する周期アンダーソン模型を解析することで、近藤絶縁体における例外点の発現を議論する。また、解析の際には、実空間動的平均場理論を用いてバルクと表面を系統的に解析する。 (c)トポロジカル物理の新たな舞台の開拓:本申請課題では、トポロジカル物理の研究を古典系で展開することを一つのテーマとして行っている。本年度はこの方向の研究でトポロジカル熱メタマテリアルという新しい舞台を開拓できた。今後の研究ではこの研究を発展させることも行う。例えば、熱メタマテリアルにおける種々のトポロジーを探索したり、生物物理などの学際的な領域においてトポロジカル物理の新たな舞台の開拓を目指す。
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