2020 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッド型タンデム触媒反応の開発を基盤とした高次構造アルカロイドの革新的合成
Publicly Offered Research
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
20H04800
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
植田 浩史 東北大学, 薬学研究科, 講師 (50581279)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドミノ反応 / タンデム触媒 / アルカロイド / 全合成 / 金触媒 / 銅触媒 / グアニジン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の医薬リード化合物の枯渇問題を受け、特異かつ複雑な骨格を有する生物活性天然物に注目が集まっている。しかし、高度に官能基化された天然物の合成は、現代の精密有機化学をもってしても容易ではなく、満足のいく量的供給や構造活性相関研究を視野に入れた誘導体合成は困難であるのが現状である。このような背景のもと、本研究課題では、分子合成オンデマンドを実現するタンデム触媒の反応の開発と、確立した新たな方法論を基盤とする高次構造アルカロイドの迅速合成法の確立を目指し、研究に取り組んでいる。 金触媒を用いたオートタンデム触媒反応を基軸とする多環性アルカロイドの迅速合成に関しては、独自に開発したドミノ型環化反応を基軸とし、海産グアニジンアルカロイドであるデヒドロバツェラジンCの全合成を達成した。さらに、確立したモジュラー型合成の利点を活かし、鍵反応のドミノ反応において、側鎖にあたるアルキンを変更することで、共通中間体からのバツェラジンDの形式合成も達成した。また、金触媒を用いたオートタンデム触媒反応を多成分反応へと応用することで、新規多置換アニリン合成も新たに確立した。 アシスト型タンデム触媒反応を基盤とした高次構造アルカロイドの迅速合成の研究においては、我々が開発したグラブス触媒を用いたアミンの酸素酸化を、第1級アミンに応用することで新たなニトリル合成法を確立した。さらに、より入手容易なアルデヒドを出発原料に用いるニトリル合成も併せて確立した。ニトリルは、医薬品によく含まれる基本的な官能基であり、また創薬において重要な骨格である含窒素複素環の合成素子としても有用である。このようにニトリルの新規合成法の確立は、薬学の発展に寄与するものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カチオン性の金錯体を用いたドミノ型反応による二環性のピロロピリミジン骨格の迅速構築法を基軸とし、高度な多環性構造を有する海産グアニジンアルカロイドの合成研究に取り組んだ。今年度は、確立した独自のドミノ型反応を基軸とし、デヒドロバツェラジンCの全合成を達成しただけでなく、そのモジュラー型合成の利点を活かし、共通中間体からのバツェラジンDの形式合成も達成した。さらに、より高度な構造を有するイソクランベシジン800の合成研究に取り組み、鍵反応のドミノ反応において、ヒドロキシ基を有するアルキンを用いることで、スピロ構造を含む三環性骨格を鎖状の共通中間体から一挙に構築することにも成功した。 さらに、これまで我々が取り組んでいた金触媒を用いたオートタンデム触媒反応を、多成分反応へと応用することで、多置換アニリンの新規合成法も確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 金触媒を用いたオートタンデム触媒反応を基軸とする多環性アルカロイドの迅速合成に関しては、本年度に引き続きイソクランベシジン800の合成研究に取り組む。すなわち、鍵反応のドミノ反応を用いたスピロ構造を含む三環性骨格においては、望む反応の進行は確認したが、収率の点でまだ改善の余地が残されている。まずこちらの条件の最適化に取り組む。その後、これまで確立した合成経路に基づきイソクランベシジン800の全合成を達成し、共通中間体から構造の異なる3つの海産グアニジン天然物の網羅的合成を達成することで、本方法論の有用性を実証する。 2) 銅触媒を用いたアシスト型タンデム触媒反応を基盤とした高次構造アルカロイドの迅速合成に関しては、シャルテリンCの合成研究に取り組む。シャルテリンCの部分構造である第四級炭素と連結したイミダゾール環の構築は、我々を含むこれまでの合成法では多段階を要していた。そこで、従来の合成から大幅な工程数の削減を可能とする、ハイブリッド触媒系による新たなドミノ型反応の開発を目指す。すなわち、市販の基質あるいは短段階で合成可能な基質を用いた、第四級炭素の構築を伴うアルキル側鎖とイミダゾール環とのカップリング法を新たに開発する。また、シャルテリンCの特徴的な構造の一つである大員環については、我々がデオキソアポディンの合成研究の過程で見出したインドールのC-Hアルキル化を適用することで、簡便な合成法の確立を目指す。 以上の合成戦略により、最終年度にあたる本年度内でのシャルテリンCの世界最短工程数での全合成の達成を目指す。
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Research Products
(16 results)