2020 Fiscal Year Annual Research Report
Role of Mincle in the regulation of Inflammation Cellular Sociology
Publicly Offered Research
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
20H04944
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菅波 孝祥 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50343752)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肥満 / 急性腎障害 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
急性腎障害モデルでは、Mincle発現が持続的に上昇し、腎虚血再灌流による尿細管障害・壊死と炎症細胞浸潤(急性期)、炎症の収束と尿細管の再生(修復期)、組織再構築(慢性期)の経過を辿る。Mincle欠損マウスは、急性期の障害は野生型マウスと同程度に認めるが、修復期に速やかに炎症が収束し、腎萎縮が軽減することを見出している。本年度は、以下の項目に取り組んだ。 1)Mincle発現マクロファージの単離・同定;Mincle発現マクロファージを単離するためにセルソーターを用いたが、腎臓から細胞を分散するために用いるコラゲナーゼ処理によりMincleが切断されることに気付いた。そこで、コラゲナーゼ処理を行わず、物理的に細胞を分散する手法を用いて、Mincle発現細胞を分取することに成功した。Mincle発現細胞は、従来のM1, M2マクロファージとは異なるユニークな遺伝子発現プロフィールを示すことを見出した。 2)Mincleシグナルの検討;従来、結核菌の細胞壁を構成するTDM(Trehalose-6,6-dimycolate)を用いて、MincleシグナルやMincleの作用が検討されてきた。そこで、内因性リガンドのβ-グルコシルセラミド+遊離コレステロールを用いて同様の検討を行った。炎症性サイトカイン産生に関してはTDMと同様であったが、貪食抑制に関しては、Mincle依存性と非依存性の作用があることを見出した。 3)包括的1細胞遺伝子発現解析;本領域のサポートを得て、肥満の脂肪組織を対象とする包括的1細胞遺伝子発現解析の予備検討を開始した。まず野生型マウスに高脂肪食を負荷し、経時的にサンプリングを行って、1細胞遺伝子発現解析に供した。得られたデータをフローサイトメーターの解析結果と比較し、脂肪組織の間質細胞を適切に解析できていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では死細胞センサーのMincleに着目して、急性炎症(急性腎障害)および慢性炎症(肥満に伴う脂肪組織)における多彩な間質細胞の時空間的挙動と意義を検討する。2020年度は新型コロナ感染症の感染拡大により、当初予定していたマウスの繁殖・実験に支障を来したが、3ヶ月間の期間延長により、最終的には当初予定していた通りの研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、急性腎障害と肥満に伴う脂肪組織炎症に関して、以下の3項目に取り組む。 1)Mincleリガンド産生メカニズムの検討;既に質量分析解析により、壊死尿細管でβ-グルコシルセラミド量が増加することを確認している。そこで本項目では、急性腎障害の後、死にゆく尿細管上皮細胞においてβ-グルコシルセラミドが蓄積するメカニズムを検討する。具体的には、グルコシルセラミド代謝酵素の遺伝子発現プロフィールの解析、およびβ-グルコシルセラミドや代謝物の測定を、急性腎障害後の腎臓や虚血再灌流障害を模した培養尿細管上皮細胞において実施する。siRNAや酵素阻害剤による介入で、β-グルコシルセラミド量の制御に重要な遺伝子を決定する。 2)Mincleシグナルの検討;これまで、β-グルコシルセラミドを細胞培養ディッシュに固相化することでMincleリガンド活性を検討してきたが、細胞を播種した時点でMincleシグナルが活性化するため、詳細な検討ができなかった。本項目では、β-グルコシルセラミドとコレステロールを共結晶化し、培養マクロファージに添加する方法を試みる。 3)包括的1細胞遺伝子発現解析;本年度の予備検討に引き続き、野生型マウスとMincle欠損マウスに肥満を誘導し、包括的1細胞遺伝子発現解析を実施する。これにより、Mincle発現マクロファージと線維芽細胞の相互作用を解明し、線維化の責任分子を同定する。
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