2020 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の運命転換における非ゲノム情報の複製・維持そして変換機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Mechanisms underlying replication of non-genomic codes that mediate plasticity and robustness for cellular inheritance |
Project/Area Number |
20H05383
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸 雄介 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (00645236)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 大脳領域化 / ポリコーム群タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
幹細胞は、発生初期には自己複製によりその数を増やし、あるタイミングになると分化細胞を産生する。すなわち、複製・維持されている非ゲノム情報を、あるタイミングで変換することで、適切な組織を構築できる。本研究では、神経幹細胞が自己複製を繰り返す増殖期からニューロン分化を開始する時期にかけて非ゲノム情報であるオープンクロマチン領域をどのように複製・維持あるいは変換することでその運命を制御しているのかを明らかにする。 本年度は、増殖機からニューロン分化期にかけて神経幹細胞が獲得する領域特異的な非ゲノム情報を明らかにすることができた(Eto#, KIshi#* et al., Nat. Comm., 2020)。胎生期の脳内で背側の神経幹細胞は興奮性ニューロンを、腹側の神経幹細胞は抑制性ニューロンを産生することで将来の機能的な脳の構築に貢献する。この背側と腹側を適切に誘導するためには、背側誘導因子であるBMP, Wntと、腹側誘導因子であるShhが正しい位置で発現することが重要である。私たちの研究により、クロマチン構造制御因子であるポリコーム群タンパク質がBMP, Wntの異所的な発現を抑制することで、適切な領域化を誘導していることを明らかにした。 興奮性ニューロンと抑制性ニューロンのバランスに異常が生じると、自閉症などの神経発達障害を引き起こすことが明らかとなっているため、脳発生初期の領域化は非常に重要なイベントである。本研究により、脳領域化を制御する非ゲノム情報としてのポリコーム群タンパク質の機能を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はニューロン分化の開始を制御するとの仮説を立てて解析を始めたポリコーム群タンパク質であったが、解析を進めるにつれて、大脳領域化を制御することを見出すことができ、査読論文として報告することができた。また、ポリコーム群タンパク質が領域特異的に標的遺伝子の発現を制御する、すなわち領域特異的な非ゲノム情報を明らかにすることができた。そのため、当初の計画以上に研究を推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまでに、Hmga2というクロマチン因子がニューロン分化の開始を制御していることも明らかにしている。現在では、Hmga2がクロマチン構造を制御する分子機構の解明に取り組んでおり、試験管内クロマチン再構成系を用いた実験を行っている。その結果、既存の報告とは異なるメカニズムでHmga2がクロマチン構造を制御していることを明らかにしつつある。本年度はこのHmga2の機能解析を通じて、神経幹細胞における非ゲノム情報の制御機構を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Protective role of HMGB1 in keratinocytes in skin inflammation by maintaining chromatin modification2021
Author(s)
Naoyuki Senda, Hideyuki Yanai, Sana Hibino, Lei Li, Yu Mizushima, Tomomitsu Miyagaki, Mai Saeki, Yusuke Kishi, Sho Hangai, Junko Nishio, Makoto Sugaya, Tadatsugu Taniguchi, and Shinichi Sato
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
Volume: 118
Pages: e2022343118
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Setd1a Insufficiency in Mice Attenuates Excitatory Synaptic Function and Recapitulates Schizophrenia-related behavioral abnormalities2020
Author(s)
Kenichiro Nagahama, Kazuto Sakoori, Takaki Watanabe, Yusuke Kishi, Keita Kawaji, Michinori Koebis, Kazuki Nakao, Yukiko Gotoh, Atsu Aiba, Naofumi Uesaka*, and Masanobu Kano*
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 15;32(11)
Pages: 108126
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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