2020 Fiscal Year Annual Research Report
器官配置の周期を構成し変調するメリステム動態の理論生物学:コケと花
Publicly Offered Research
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
20H05415
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 仰一 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60334306)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 花 / 細胞分裂面 / 数理モデル / 形態形成 / コケ |
Outline of Annual Research Achievements |
花器官配置の特定に不可欠な花被片の重なり方を、キンポウゲ科複数種の200枚の画像から推定するメタ学習の構築に協力した。 コケ植物では、2周期と3周期が頂端幹細胞の異方的成長の速度に応じて切替わることを数理モデルから予測した。さらに、らせん配置を調節する細胞分裂面の役割を明らかにした。3種のコケでは、頂端幹細胞から切り出された(将来に葉となる)メロファイトの2つが成す開度は、幹細胞に隣接する若いメロファイトでは振動するが、古いメロファイトでは種ごとに一定角度へ収束する。この開度パタンを再現するモデルを構築した。頂端幹細胞やメロファイトの形を観察に基づきモデルへ導入した。加えて、幹細胞とメロファイトの等方成長と、幹細胞分裂面の一定角度での回転を仮定した。その結果、開度の振動は、幹細胞の重心が細胞分裂時に移動することに因ることを発見した。収束する開度は、幹細胞分裂面の回転角度と一致した。すなわち、らせん配置の多様性は、幹細胞分裂面の回転角度で調節されることを予測した。 さらに、器官の形に種や発生の違いを超えた共通性を生む発生原理を発見した。根端の大きさを揃えて形を比較すると、被子植物10種の主根とArabidopsis側根の輪郭が全て一致した。これら輪郭は、橋などに見られる力学的に安定なカテナリー曲線と一致した。建築物にかかる力を参考に、根端にカテナリー曲線を生む2つの性質(1)細胞が一様かつ一方向に分裂伸長、(2)周縁で細胞分裂しない、を予測した。これら2つを側根発生で確認し、力学シミュレーションへ導入すると根端はカテナリー曲線となった。どちらか一方を乱すと、シミュレーションとArabidopsis変異体いずれもカテナリーから逸脱した。この異方的・局所的な分裂が、根端がカテナリー曲線となる必要十分条件だと示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の中核となる、コケ植物の葉の配置の空間周期性については、幹細胞の分裂面の幾何学特性に応じて器官配置の多様性が生まれることを定量的に明らかした。嶋村班との共著論文を投稿できた。 花器官配置については、内海班との共著論文を出版できた。 さらに、被子植物では、根の先端の形の定量解析と数理モデリングと遺伝学実験を組み合わることで、形が種を超えて共通することとその背後にある発生機構の特定に成功した。中島班、深城班との共著論文を出版できた。雑誌の当該号でハイライトされるなど高い評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
幹細胞の異方的成長もモデルへ導入することで、コケ植物葉序にはたす分裂面の回転角度の役割をより正確に同定する。この角度を決める仕組みとして、分裂面の面積極小則や力学作用に加えて、細胞内分子局在の作用を調べる。班員との議論を通じて、これら幾何学、力学、生化学的作用の定量数理モデリングを発展させ、様々な現象の動作原理を探索する。
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Research Products
(4 results)