2010 Fiscal Year Annual Research Report
Alcadeinによる膜小胞輸送制御機構と神経変性疾患
Publicly Offered Research
Project Area | Intracellular logistics: interdisciplinary approaches to pathophysiology of membrane traffic |
Project/Area Number |
21113501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 利治 北海道大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (80179233)
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Keywords | 神経変性疾患 / 神経膜輸送 / 膜タンパク質 / セクレターゼ / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
Alcadeinは、Alcα、Alcβ、AlcγからなるI型膜タンパク質ファミリーで、神経系に強く発現する。Alcの細胞質ドメインは、キネシン-1モーターの軽鎖(KLC)に結合するWDモチーフを含み、キネシン-1に結合し軸索内の順行輸送を受ける。一方、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子の1つであるAPPもJIP1bを介してキネシンに結合し、AlcとAPPは共にキネシン-1のカーゴ受容体であると考えられている。APPとAlcの均衡の取れた輸送が両タンパク質の代謝安定化に必要であり、輸送バランスの喪失は、アルツハイマー病の発症に関わるAPPの代謝産物βアミロイド(Aβ)の産生増を引き起こす。従って両タンパク質の輸送・代謝制御機構の解明は、神経機能と神経変性疾患の発症機構を明らかにする上で重要である。APPとAlcadeinはゴルジ体でX11Lの制御下に結合していると考えられている。両タンパク質は、それぞれ別の膜小胞としてbuddingしキネシン-1による順行輸送を受ける。APPが比較的安定的に順行輸送を受けるのに対し、Alcは輸送途中でセクレターゼによる切断を受けやすい事が明らかになった。Alcが過剰な状態ではAPP小胞の順行輸送が阻害され、アミロイド生成的な代謝が増加した。AlcはAPPと同様の代謝を受ける事が判明し、その代謝産物がAPP輸送に影響を与えている可能性がAD患者で考えられた。AD患者のCSF中のAlc代謝産物は、健常人に比較して変化が認められた。本研究はAlcの輸送変化とそれに伴う代謝変化がAPPなど他のカーゴの輸送及び代謝に影響を与え神経変性疾患の引き金になる可能性を示唆する。
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