2023 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of condensed conjugation in crystals of twisted pi-systems with C3-symmetry
Publicly Offered Research
Project Area | Condensed Conjugation Molecular Physics and Chemistry: Revisiting "Electronic Conjugation" Leading to Innovative Physical Properties of Molecular Materials |
Project/Area Number |
23H04027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 研一 京都大学, 工学研究科, 助教 (10879406)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | π積層ネットワーク / 有機結晶 / 立体構造 / プロペラ型分子 / 光学活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ねじれた結合を介した有効な分子内共役と分子間の強いπ/π相互作用を両立したプロペラ型分子群の合成探索、およびプロペラ中の各平面に独立して積層型二量体を形成させることで全体に非局在化された高密度共役電子系を有する結晶の創出を目指している。 合成法と安定性の観点から取扱が容易と考えられる窒素を中心原子に選択した系においては、トリ(1-ピレニル)アミンについて単結晶X線構造解析に成功し、意図した通りに方向を揃えてねじれたプロペラ構造を確認できた。合成単離は物性測定や後続反応に十分なスケールで実施でき、電荷移動性のある遷移を含んだ紫外可視吸収および蛍光分光を示すこと、トリフェニルアミンに比較して低い酸化電位を有すること、酸化剤を加えることによりジクロロメタン中で空気安定に一電子酸化種を発生できることを明らかにした。中心元素をホウ素とした系についても予備的な合成検討に着手した。類似構造を有する誘導体のπ共役置換基として、3つのエチルチオ基を導入したピレン環および2,4位にクロロ基をもつナフタレン環を十分量合成できる手法を確立し、前駆体が利用可能な段階にまで合成を進めた。 骨格中央部の分子設計はやや異なるものの固相でπ平面を接近させるという概念を共有した研究として、従来の分子群に比較して絶縁的に振る舞うアルキル鎖の比率を大きく低下させながら均一なフィルムへと分子集積する分子系統を開発した。固相で接近したπ平面を利用することで、可視光域において単分子とエキシマの二重発光を示し、相互作用能力の乏しいヘキサン蒸気にも応答してその発光比率を変える分子も見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は進行中の関連研究のないところから新規に立ち上げたもので試行錯誤が他の研究以上に重要であったが、所属研究室の事情により当初予定していたほどの労力を充てることが困難となったために限られた時間内で検討を行うこととなった。 しかしながら、トリ(1-ピレニル)アミンを物性測定や後続反応に利用できるスケールで合成単離することに成功し、電荷移動性のある電子遷移を含んだ紫外可視吸収および蛍光分光、電気化学測定、化学酸化種の空気安定な発生と観測を実施できた。検討対象であったハロゲン化反応はトリ(1-ピレニル)アミンの分解を引き起こすという結論に至った一方で、適度な溶解度を有しながらCH/π相互作用を抑制するための分子修飾として、合成の初期段階でエチルチオ基を導入する手法を見出した。ナフタレン環上の分子修飾についても1-ヨード-2,4-ジクロロナフタレンをグラム単位で合成することができた。高密度共役結晶への集積化、構造解析と固体物性の評価という観点ではやや遅れているものの、研究の基盤化合物が整ってきていることから今後の進展につながるものと考られる。 その一方で、固相でπ平面を接近させるという概念を共有した派生的な研究テーマについては順調な成果を挙げられている。絶縁的なアルキル鎖の比率を抑えつつフィルムを形成できるプロペラ型分子についてはすでに論文が公開されているほか、固相で接近したπ平面に基づく発光材料の論文も投稿済みの段階まで進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
トリ(1-ピレニル)アミンについて一電子酸化種の単結晶作成を検討し、構造解析と固体物性の評価に着手する。 合成手法を確立した1-ヨード-2,4-ジクロロナフタレン、エチルチオ基を導入した1-ブロモピレンを用いて合成を進め、対応するトリアリールアミンおよびトリアリールボランを合成単離する。まず、中性種について単結晶の作成と構造解析を行い、π共役置換基が大きくねじれたプロペラ単分子構造とπ/π積層を優先したパッキング構造を有しているかを確認する。 以上の分子群に対し、溶液状態での分光学・電気化学測定による分子物性の評価を行うとともに、結晶構造を圧縮できる対イオンの検討を含めて一電子酸化・還元種、それらの中性種との一対一混合物結晶を作成する。単結晶X線構造解析を行いながら最も良質かつπ共役骨格が稠密に集積する対イオンを最適化し、得られた結晶の導電性や磁性を含む固体物性を領域内での共同研究を最大限活用しながら詳細に調査する。特に、中性種と一電子酸化種の一対一混合物のハニカム格子結晶はスピン系がフラストレーション格子を形成すると予測されるため、SQUID磁気測定等を駆使して詳細に磁性の評価を行う。
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Research Products
(26 results)