2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機不斉触媒反応を活用した第四級不斉炭素含有アルカロイド類の合成
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105523
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小槻 日吉三 高知大学, その他部局等, 副学長 (80093954)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機不斉触媒反応 / Robinson型環化反応 / Michael付加反応 / Diels-Alder反応 / 不斉識別反応 / 第四級不斉炭素 / 生理活性天然物 / アルカロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
天然には第四級不斉炭素中心を有する生理活性物質が多数存在し、医薬品のリード化合物となるものも多い。このような化合物を合成する上で、第四級不斉炭素中心を望む立体配置で構築することは非常に重要なテーマとなっている。今回、以下に示す独自のアプローチを検討し有益な成果を得た。 1.ジアミン系不斉触媒を活用した不斉Robinson型環化反応の開発:ロビンソン環化反応は、活性化ケトン類とα, β-不飽和ケトンを酸あるいは塩基触媒を用いて、対応するシクロヘキセノン誘導体へと変換する有用な手法である。今回、キラルジアミンとキラルジカルボン酸を組み合わせた不斉触媒システムを用い、4位に第四級不斉炭素中心を有するシクロヘキセノン誘導体の不斉合成に成功し、それを利用して(-)-mesembrineの短工程での合成ルートを開発した。 2.キラルチオ尿素/PPY二重触媒システムを活用した不斉Michael付加反応の開発:Michael付加反応はC―C結合形成反応として極めて重要な反応の一つである。我々は、キラルなシクロヘキサンジアミンから容易に調製される一級アミン/チオ尿素共存型触媒とPPYとの二重触媒システムを利用して、種々のエノン類に対するマロン酸エステルの高選択的不斉Michael付加反応を達成した。 3.キラルチオ尿素触媒を活用した不斉Diels-Alder反応の開発:チオ尿素系化合物はカルボニル基と水素結合を形成し反応活性化に寄与する。この知見をもとに、アルキリデンオキシインドールをジエノフィルとして、キラルチオ尿素触媒存在下での不斉Diels-Alder反応を開発した。 4.不斉識別的官能基変換反応の開発:不斉識別的官能基変換反応を基軸とした第四級不斉炭素中心構築法の開発として、シクロブタノン類のBaeyer-Villiger酸化によるγ-ブチロラクトン類への変換反応を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体を通してほぼ当初計画通りの成果を得ている。このうち、Robinson型環化反応を基軸とする(-)-mesembrineについては、全収率の改善が残されている。不斉Michael付加反応については、優れた一般性を明らかにしており、種々の生理活性天然物合成への応用が期待される。不斉Diels-Alder反応については、生成物の絶対構造の確認と立体化学の決定が残された課題である。不斉識別的変換反応への展開については、方法論の開発を含めて有為な成果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
① 第一級アミン系有機不斉触媒を用いた不斉Robinson環化反応の汎用性拡張:我々が最近開発した、キラルな1,2-シクロヘキサンジアミンを有機触媒とする不斉Robinson型環化反応の問題点を解決しつつ汎用性の拡張を目的として、主として新規な第一級アミン系不斉触媒の開発に力点をおいて検討する。 ② チオ尿素系有機不斉触媒を用いた不斉Diels-Alder反応の開発:チオ尿素系不斉触媒による各種ジエノフィルとの不斉Diels-Alder反応に対するチオ尿素触媒の添加効果を検討する。付加物は常法に従って加水分解することにより、①の方法で合成したシクロへキセノン骨格へと誘導する。なお、必要な場合には反応効率の向上を目的として、超高圧反応場やマイクロウェーヴ反応場の適用を検討する。 ③ 有機不斉塩基触媒を用いたメソ化合物の不斉識別反応の開発:第四級不斉炭素中心を分子内に有するメソ化合物の不斉識別的なアプローチはそれほど多くはない。今後は、主として第一級アミン系の有機不斉塩基触媒を用いた不斉識別的分子内Michael付加反応を基軸とする第四級不斉炭素中心構築法を開発する。 ④ 上記手法を駆使した第四級不斉炭素含有多環性アルカロイドの合成:上記手法を駆使して、本研究の到達目標である第四級不斉炭素含有多環性アルカロイドの合成を達成する。標的化合物は、 (ー)-lycoramine、(ー)-aspidospermidine、(ー)-eburnamonine等である。
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