2012 Fiscal Year Annual Research Report
ドナー・アクセプター配位プログラミングによる電子・スピン制御
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
24108714
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮坂 等 金沢大学, 物質化学系, 教授 (50332937)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電子ドナー・アクセプター / 金属ー有機物骨格体 / 磁気秩序 / 電子輸送 / 外部摂動 |
Outline of Annual Research Achievements |
i) [Ru2]/TCNQ, DCNQI系D/A型の電荷移動化合物の系統的電荷移動制御 ⇒ 現在までに得られたD/A集積体についてD/AそれぞれのDFT計算による、HOMO/LUMOエネルギーレベル差(縦軸)と第一酸化還元ポテンシャル差(横軸)により作られるイオン性度相図を作製し、本系がD/AのHOMO/LUMO準位のエネルギー差により電子移動を説明できることを明らかにした。それにより、どの位置の電子状態を得たいかを予測でき、N-I転移のドーピングやN-I転移を起こしそうな化合物を設計するに至った。 ii) 自己集積により自動挿入される層間分子の電子的影響 ⇒ 単純なボトムアップ式の分子集積でD/A電荷移動を制御する方法には大きく分けて2通りあり、一つは上記したようにD/AのHOMO/LUMOギャップを制御することであり、もう一つは、TCNQやDCNQIとπ-スタックする層間分子との相互作用を使う方法である。pyrene分子は、多くのアクセプター分子と中性の電荷移動錯体を作り、D/A間でフロンティアー軌道を作って、電荷を安定化する。そのため、イオン性のD/A系にこのような分子を挿入することで、D/A格子の電荷移動を摂動的に制御できる可能性がある。本研究において、二次元層状化合物へのpyreneドナー性分子の挿入した新たな化合物を合成することに成功した。pyrene-freeの化合物では、二次元層内でD/Aの電子移動が起こっていたが、pyrene挿入分子では、層内の電荷移動が抑制されることが発見された。これは、層内のTCNQとpyreneがフロンティア軌道を形成し、TCNQのLUMOレベル(反結合性軌道)が上昇したために、Ru2分子からの電子移動が起こらなくなったためと考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で課題を5つ設定したが、現時点で新しい芽も含めて2~3つの課題については興味ある結果が得られており、現在論文としてまとめている最中である。また、本系の前提である「D/AのHOMO/LUMO準位で予想される電荷移動と配位プログラミングにより予想される構造」が十分に達成されており、選択的構造構築と電子制御により、多様なD/A-MOF(ドナー・アクセプター金属ー有機物骨格体)、DAF(ドナー・アクセプター格子)を構築することが可能となっている。H25年度の計画(残り3つ)に関しても大いに期待でき、また、新たな展開が望めると自負している。今後は、化合物開発と平行して、物性探索と電子・スピン制御にウェイトをかけていく。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、以下の3つの課題を基本計画に行い、新たな展開の芽を探索する。 iii) 光応答性 ⇒ 二次元層状化合物[{Ru2(CF3CO2)4}2(TCNQ)]2(anthracene)の光照射によるanthraceneの[4π+4π]二量化反応と熱解離反応の状態スイッチ iv) 高電場印加による非線形伝導 ⇒ 本研究で用いるD/A集積体の多くが、高電場で非線形伝導を示し、中には、高電場を印加することで、金属状態へ転移するものも存在する。高電場中での状態変化について調べる。 v) 置換基の秩序・無秩序配向に誘起される誘電応答と磁性 ⇒ [{Ru2(o-ClPhCO2)4}2{TCNQ(MeO)2}] CH2Cl2は、結晶溶媒(CH2Cl2)の脱離により磁性を劇的に変化させる。溶媒脱離に伴って、配位子のdisorderが発生する。この溶媒脱離と構造変位について誘電応答でモニターし、併せて、磁場下での状態変化を確認する。 “外部摂動による機能制御”として総合的に取り扱い、特に、分子変換(e.g., [Ru2]を[Rh2]に変換して反磁性・絶縁体化)のような化学的アプローチを用い、誘電測定、伝導度測定、磁化率測定、固体NMR測定などを駆使することにより現象の詳細を明らかにする。ターゲット物質が、以前の研究により設計性の高いものであることが証明されているため、実現の可能性は高く、多くの成果が十分に期待できると考えている。
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