2014 Fiscal Year Annual Research Report
裁判員裁判における量刑分布グラフの効果と意義
Publicly Offered Research
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
26101701
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐伯 昌彦 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (10547813)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 裁判員裁判 / 量刑分布グラフ / 評議 / 模擬裁判研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、裁判員裁判における過去の量刑傾向についての資料である量刑分布グラフが、裁判員によってどのように利用され、そのことがどのような影響をもたらすのかを調べるために、来年度の本調査に向けた予備的調査等を行った。 本調査では、量刑分布グラフに位置づけについて裁判官からなされる説明が、裁判員の評議行動や裁判員制度への印象等にどのような影響を及ぼすのかをしらべるために、模擬裁判の手法を用いた実験研究を行うことを計画している。そのような実験研究を実施するために、実験参加者に視聴してもらう裁判映像を作成する必要があった。そこで、2014年度には、まず実験の素材とすべき事案について適切なものを選択するために、いくつかの事案について市民の印象を尋ねるウェブ上でのアンケート調査を行った。そこでの調査結果を踏まえ、介護殺事案を実験で用いることが適切であると考え、そのような事案の映像を作成する作業に取りかかった。そして、実際に刑事裁判の実務に携わっている弁護士からの助言も受けつつ、なるべくリアリティを追求し、かつ実験研究に適切な長さの模擬裁判映像を作成した。 2015年度には、この実験映像を用いて、心理実験を行うことを計画している。具体的には、一般市民に裁判映像を見てもらい、6人1組で事件について評議をしてもらう予定である。このような評議実験の実施上の問題点がないかどうかを検討するために、2014年度は、小規模ながら、作成した模擬裁判映像を用いて予備的実験を行った。この予備的実験の結果、実験計画に大きな問題はないと判断されたため、この予備的実験で得られたデータを用いて、予備的な分析を行った。すなわち、アンケート票の結果や、話し合いの模様についてのデータを用いて、2015年度以降の本調査に向けた予備的な検討を行ったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度には、2015年度に行う本調査の準備として必要な研究を遂行することを予定しており、こまでのところ、その目的は達成していることから、「おおむね順調に進展している」との評価を行った。 具体的には、①実験研究で利用する裁判事案の選定のための予備的調査の実施、②実験研究で利用する模擬裁判映像の作成、③作成した模擬裁判映像を利用した予備的な実験研究の実施を行うことが2014年度の計画として掲げられていたところ、それらすべての課題を遂行することができた。加えて、模擬裁判映像を利用した予備的な実験研究においては、翌年度に計画されている本調査の実施にあたって大きな問題は見つからなかった。このため、本年度の準備を踏まえて、2015年度は順調に本調査を遂行することができることが予想される。 もっとも、当初は裁判官役も用意したうえで実験研究を行うことを計画していたが、この点については、若干の修正を加えた。しかしながら、これは、検証すべき課題との関係で、裁判官役を話し合いに参加させるのではなく、むしろ裁判映像や実験参加者に配布する資料において裁判官からの指示を明記する方が適当であるとの判断に基づくものであり、研究の遂行を妨げるような変更ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」の箇所でも述べたように、2014年度における研究の進行状況は順調であり、そのため2015年度は順調に本調査を実施できることが予想されている。そのため、特段の研究計画の変更は必要なく、当初の想定通りに研究を遂行していく予定である。
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