2014 Fiscal Year Annual Research Report
化学修飾導入siRNAによる1遺伝子特異的ケムバイオケム型RNA干渉法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
26102713
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
程 久美子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50213327)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | siRNA / 化学修飾 / ケムバイオケム / RNA interfering / RNA silencing |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA interference (RNA干渉)とは、小さな2本鎖RNA (small interfering RNA, siRNA)が、相補的な塩基配列をもつmRNAと対合して切断することで、遺伝子発現を抑制するという現象であり、簡便な遺伝子ノックダウン法として利用されている。しかしながら、その臨床応用などへの実用化という観点からは、特異性や安定性などに置いてまだ解決すべき重要な問題を抱えている。本研究では、siRNAの核酸対合の科学的性質(ケム)がサイレンシングの程度を規定するという我々の生物学的な研究成果(バイオ)に基づき、RNAに適切な化学修飾(ケム)を導入することでRNA干渉における問題点を克服し、目的をする1遺伝子特異的ノックダウン法を開発することを目指している。すなわち、本研究では、siRNAへ化学修飾を入れることで、塩基配列を制限することなく、塩基対合の安定性を効率よくコントロールできる手法を構築する。 本年度は、化学修飾として、2'-O-Methyl(2’-OMe)、phosphorothioate lincage (PS)、DNA、DNA-phosphorothioate (DNA-PS)、Locked Nucleic Acid (LNA)、Unlocked nucleic acid(UNA)を用いた。これらの化学修飾を導入したsiRNAを用い、レポーターアッセイおよびマイクロアレイ解析を行い、その遺伝子抑制効率およびゲノムワイドな特異性を検討した。 その結果、今回用いたsiRNAに対する化学修飾は、すべて標的遺伝子特異性を向上させるという結果が得られた。それらの中でも、DNA、LNA修飾が導入されたsiRNAは未修飾siRNAと比べて、RNA干渉作用を損なわないまま、効率的にオフターゲット効果を回避する化学修飾の有力な候補であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回は、いくつかの化学修飾を導入したsiRNAを用いたレポーターアッセイとマイクロアレイ解析を行った。まず、レポーターアッセイの結果より、guide strandの標的遺伝子に対するRNA干渉効果は、用いた化学修飾のうち、DNA-PSとUNAを除いて、未修飾siRNAと遜色ないと考えられる結果が得られた。Passenger strandの標的遺伝子に対するRNA干渉効果は、用いたすべての化学修飾で未修飾siRNAより強い作用は認められなかった。また、オフターゲット効果については、今回用いた化学修飾である2’-OMe、PS、DNA、DNA-PS、LNA、UNAはすべてオフターゲット効果を減弱するという予想以上の効果があることがわかった。 また、マイクロアレイ解析の結果、siRNAの標的遺伝子に対するRNA干渉効果は、DNA-PSとUNAを除き、2’-OMe、PS、DNA、およびLNA修飾をguide strandに導入しても、未修飾siRNAと同程度の十分なRNA干渉効果が認められた。一方、guide strandのオフターゲット効果は、2’-OMe、PS、DNA、LNAのすべてでオフターゲット効果を減弱する作用があると考えられた。また、passenger strandのオフターゲット効果は、LNAおよびDNA修飾では、未修飾siRNAと同程度であったが、2’-OMeおよびPS修飾では増強されていることが明らかになった。 以上の結果から、今回用いた化学修飾の中では、DNA、LNA修飾が導入されたsiRNAは未修飾siRNAと比べて、RNA干渉作用を損なわないまま、効率的にオフターゲット効果を回避する化学修飾の有力な候補であるという有用な結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回のマイクロアレイの結果から、2’-OMe修飾ではguide strandのオフターゲット効果は弱くなっているのに対し、passenger strandのオフターゲット効果が強くなっていることがわかった。2’-OMeは熱力学的安定性が増加する化学修飾である。我々の先行研究では、guide strandのシード領域の熱力学的安定性が低く、塩基対合力が弱いsiRNAはオフターゲット効果が減弱することを示している。このことは、siRNAは5’側から一本鎖化したRNA strandがRISCに取り込まれやすいことと、シード部分とオフターゲット遺伝子との塩基対合力が弱いと、オフターゲット効果は弱いことを示している。Guide strandのシード領域に2’-OMe の化学修飾を導入すると、guide strandの5’側の安定性が増加すると考えられるが、これは相対的にpassenger strandの5’側の安定性が減少することを意味している。そのため、5’側と3’側の安定性のバランスが逆転し、1本鎖へunwindingする過程でRISCに残る一本鎖siRNAとしてguide strandが減少し、passenger strandが増加したため、guide strandのオフターゲット効果が弱くなり、passenger strandの効果が強くなった可能性が考えられた。LNAも2’-OMeと同様に熱力学的安定性を増加させる化学修飾であり、同様の効果が認められた。 以上の結果をもとに、2’-OMe修飾を導入する塩基数を変えることで、塩基対合力を調節することで熱力学的安定性をコントロールすることで、両方のRNA strandともにオフターゲット効果がそれほど強くない、バランスの良いsiRNAが設計できる可能性があると考えられたため、その可能性について、今後検討する予定である。
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