2014 Fiscal Year Annual Research Report
共感性の実証研究に関する道徳哲学・倫理学・科学哲学的考察
Publicly Offered Research
Project Area | Empathic system |
Project/Area Number |
26118504
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
中尾 央 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (20720824)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 哲学 / 倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は計画書に書いた通り,(1)共感性を中心とした道徳性に関わる進化・神経的研究を踏まえ,従来の道徳哲学・倫理学で(所与の能力として)前提されているさまざまな道徳性の基盤を再考する.(2)主に科学哲学の観点から,共感性に関する進化・神経的研究そのものを批判的に検討し直し,その妥当性を評価したり,あるいはより体系だった見通しを与えたりする.という二つの点について研究を遂行した.(1)については近年ケア倫理学などで共感をベースとした道徳哲学の議論が構築されており,それらをサーベイすることにより,問題点や可能性などを考察した.その成果は現在,レビュー論文として公表できるように準備中である.(2)については,共感性のさまざまな研究において,同情(sympathy)と共感(empathy)の間のギャップが埋められていないことを指摘し,このギャップをどう捉えるかについて考察した.この点については,今後共同研究等を通じて考察を進めていく予定である. また以上二点以外に関しても,共感性と関連する内容として,メタ認知の比較心理学的研究,また人間進化全体の科学哲学的考察なども進めることができた.これらについては,二つの論文と書籍として発表することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的をおおむね遂行できており,その成果を発表することが次年度の目標となる.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは昨年度の研究遂行結果を形にすることから始める.(1)の目標についてはレビュー論文を準備中であり,その執筆と投稿が第一の目的である.(2)の目的については共同研究を遂行し,最低限何らかの見通しをえることが目的となる. さらに,共感性をより広い文脈から捉えなおすため,人間進化全般,また関連するさまざまな能力に関する考察も進める.これにより,共感性をより相対的に捉えることが可能になるはずである.
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