Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
染色体末端構造であるテロメアは、テロメアDNA・テロメアDNA結合タンパク質複合体を核として、複数のタンパク質が集合してできた機能的高次構造体である。テロメア構造の制御機構は細胞周期と密接な関連があると考えられているが、その詳細については未だ不明な点が多い。そこで我々は、アフリカツメガエル卵抽出液を用いることにより、細胞周期の進行に伴うテロメア構造の変化について解析を試みた。まずCSF (cytostatic factor) arrested extractsを用いて、細胞周期の進行に伴うxTRF1の動態について解析を行った。分裂期及び間期のクロマチンに結合しているxTRF1の量について比較したところ、分裂期のクロマチンにはxTRF1のシグナルが検出されたのに対し、間期ではxTRF1のクロマチンからの解離が起こり、その結合量が大きく減少していることが明らかになった。DNA複製を阻害した場合にも、xTRF1のクロマチンからの解離はコントロールの抽出液を用いた場合と同様に起こり、この解離はDNA複製に依存しないことが示された。一方、間期の抽出液に非分解型のサイクリンB (cycBΔ90)を加えて分裂期への移行を誘導したところ、xTRF1は再びクロマチンに結合した。また、Tankyraseを免疫除去したextractsでは、xTRF1の解離が顕著に阻害されたことからこの解難がTankyraseを介してのものであることが示された。さらに分裂期、間期のクロマチンに結合しているテロメレースの活性を測定したところ、テロメレースのクロマチン結合能は、xTRF1とは逆に間期に増加していることが明らかになった。以上の結果は、テロメア構造がTRF1の結合・解離を介して変化することで、S期におけるテロメアDNAの伸張を正に制御している可能性を示唆している。