Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
本研究は大腸癌におけるβ-カテニンのがん化シグナル活性化とその標的分子群の発現や,この情報伝達系の制御異常をさまざまな癌病態との関連から個別的かつ網羅的に究明することを目的としている.この解析を通じて得られる知見を大腸発がん・進展機構の解明,悪性度・予後などのがんの個性に関する分子診断や,この情報伝達系の制御・転写因子を標的にした分子治療などに応用することも目指している. 近年,ユビキチンシステムががん遺伝子やがん抑制遺伝子産物の発現制御を介して発がん・進展に関与することが示されている.β-カテニンがん化シグナル制御の本質もユビキチンシステムにあり,昨年度までに我々はβ-TrCP(E3ユビキチンリガーゼ受容体)がβ-カテニン依存的に誘導され,β-カテニンとともにIkBαのユビキチン化分解を標的とすることによりNF-κBシグナルを誘導することを見出してきた.このような背景から今年度は,大腸癌病態におけるβ-カテニンのユビキチン化分解システムの関与を明らかにする目的で,45例の大腸癌を対象にβ-TrCPの発現(mRNA,蛋白)と局在を解析し,β-カテニンやNF-κBの活性化,アポトーシス,臨床病態との関連について検討した.その結果,β-TrCPの発現亢進を認めた25症例(56%)ではβ-カテニンの活性化が高頻度であり,アポトーシスは有意に減少していた.これらの腫瘍においてβ-TrCPはβ-カテニンや活性型NF-κB(p65)とともに核内に局在していた.β-TrCPの発現亢進は臨床的には癌細胞の脈管侵襲や異時性遠隔転移の発生と有意な相関を示した.以上の結果から,β-TrCPはβ-カテニンがん化シグナルおよびNF-κB細胞生存シグナルを同調させることにより,大腸癌の進行と悪性度や臨床病態に重要な影響を及ぼすことが明らかとなった.また今年度の成果は,β-TrCPとその関連因子を標的にした癌病態の分子診断や分子標的治療開発の基盤になることが示唆された.
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