Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
パキシリンはLIMドメイン等、複数の蛋白質結合モジュールで構成されるインテグリン裏打ち蛋白質である。RNAi法を用いショウジョウバエパキシリンホモログ(Dpxn)の発現抑制を行ったところ、成虫翅において形態異常が認められた。ショウジョウバエの翅は二層の上皮層が互いにインテグリン介して接着した構造をしており、Dpxnの発現抑制による表現型の一部(wing blister)はこの接着が阻害されたものと考えられた。従って、個体発生においてDPxnはインテグリン接着構造の安定化の一部を担うと考えられた。パキシリンのインテグリン接着構造への局在の一部はそのLIMドメインにより担われると考えられている。酵母ツーハイブリッド(Y2H)法を用いDpxnのLIMドメインと結合する因子を調べたところ、LIMドメインのみで構成される蛋白質PINCH(Dpinch)がDpxnのLIMドメインと結合することが明らかとなった。DpinchはY2H法において、それ自身とも結合性を示し、さらに抗Dpxn抗体をもちいた免疫沈降実験により、S2細胞内でDpxnとDpinchは複合体を形成することが明らかとなった。PINCH(Dpinch)はインテグリン裏打ち蛋白質の一つで、DPxn同様、翅上皮組織間の接着の安定化を担うことが知られている。このことから、Dpxn、Dpinch等のインテグリン裏打ちLIM蛋白質群がLIMドメイン介して複合体を形成することが、インテグリン接着構造の安定化の一部を担っているとの仮説を立てた。実際、羽化直前の翅のインテグリン接着構造において、Dpinchの発現抑制を行ったところ、インテグリン接着部位付近のアクチン細胞骨格に異常が生じると同時に、Dpxnの局在性が顕著に変化することが明らかとなった。現在、引き続き上記仮説の検討を行っている。