Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
平成16年度の研究では、観測信号に含まれる雑音成分を効果的に除去、または分離する手法についての研究を中心に行ってきた。単チャンネル信号処理に関する研究では、部分空間分解法を応用した新しいスペクトル引き算法を提案した。提案法は、部分空間分解法の一つであるmultiple signal classification (MUSIC)法を音声信号に応用し、雑音成分を効果的に除去するものである。MUSIC法は信号を構成する正弦波成分の周波数を高分解能で推定するための一手法である。本研究では、MUSIC法の周波数分解能を離散フーリエ変換(DFT)程度に落とすことで、MUSIC法を用いた雑音除去法がスペクトル引き算法の形に帰着することを示し、従来のスペクトル引き算法では決定が困難であった最適なパラメータの値を導出した。また、MUSIC法の中で用いられる固有値の分布が音声区間の情報を含むことを指摘し、新しい音声区間抽出法(VAD)を提案した。提案法は比較的簡単なアルゴリズムのため計算量が非常に少なく、実時間処理に適していることが示された。2ch信号処理に関する研究では、ブラインド信号分離(BSS)の一手法について提案した。BSSは、観測信号のみを用いて個々の信号を分離するための手法である。提案法では、観測信号を狭帯域周波数信号に分解することで、実環境における音声信号等の混合モデルである畳み込み混合モデルが、比較的簡素な瞬時混合モデルの集合へと分解できることを示し、既存法である独立成分分析(ICA)と呼ばれる瞬時混合モデルのためのBSS手法を各周波数帯域へ適用することで個々の信号が分離されることを示した。また、観測信号を狭帯域周波数信号に分解する方法として、ヒルベルト変換と低域通過フィルタを組み合わせる方法を提案した。
All 2005
All Journal Article (1 results)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences Vol.E88-A, No.3
Pages: 690-701