Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
平成15-16年度にタンザニア、マハレ山塊国立公園でおこなった野生チンパンジー調査で収集した資料を分析した。資料は未成熟チンパンジー17個体を追跡して得た320.3時間の観察中に、母子間や血縁間、非血縁間でおこなわれた毛づくろいや食物分配などの利他行動を記録したビデオ等である。母子間の食物分配では、子が母親に肉を要求し、母親が口で肉を切り分けて与える行動を観察した。しかし母親が与える肉片は小さい場合があり、子は必ずしも与えられた肉を食べるわけではなかった。食物分配は所有者が分配する際に不公平がおこる可能性を指摘し雑誌に公表した。平成15-16年の調査結果と、平成11-12年の同調査地におけるオトナ期のチンパンジーの調査結果をあわせ、ヒトや飼育下の真猿類と、毛づくろいのかき分け速度について比較した。チンパンジーのかきわけ速度は比較的遅く、外部寄生虫除去という利他的な機能が小さいと予想したが、実際は体サイズとアロメトリーな関係にあり、とくに寄生虫除去効果が小さいとは考えられなかった。これを学会発表した。未成熟個体の基準になるオトナの毛づくろいを分析した。オトナでは他個体への毛づくろいが自分への毛づくろいよりも外部寄生虫除去効率が高かった。この結果は、自分自身の外部寄生虫を除去するときには、自分でやるよりも、相手と毛づくろいのやりとりをおこなった方が有利であることを示唆しており、毛づくろいという利他行動が進化したひとつの要因であると考えられた。この成果は現在、雑誌に投稿中である。行動観察のほかに、寄生するシラミ卵の密度を調べた。チンパンジーが樹上に作るベッドから毛を採取し付着しているシラミ卵を数えた結果、毛1000本あたり1.2個という密度であり、平成11-12年の結果(毛1000本あたり2.8個)より低かったが、ニホンザル(毛1000本あたり0.14個)より高かった。
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Pan Africa News 12・1
Pages: 8-10