Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は、相互作用する一次元電子系の通常相である朝永・ラッティンジャー(TL)流体の伝導問題を研究した。一様なTL流体においては、相互作用を取り込んだ集団励起の長波長揺らぎにより電荷が運ばれる。特に絶対零度近くに限定すればこの長波長集団励起だけが、系の振る舞いを決定する。一方、非一様なTL流体においては(たとえば不純物一つの存在は非一様性を生む)、一様系における長波長の集団励起と1粒子励起の短波長成分とが複雑に絡み合い、その影響で電気伝導特性も一様系のものと大きく変わる。不純物1つを含む斥力相互作用する皿流体において、不純物による電子の散乱振幅(もしくはTL流体の集団励起の反射率)が、絶対零度に向かい温度の関数として急激に増強され、電気伝導度はゼロにスケールされる。さらに、相互作用が引力であれば、逆に絶対零度に向かい散乱振幅が抑制され、電気伝導度は不純物のない量子細線の値(量子コンダクタンス)にスケールされる。相互作用の正負によりスケールされる方向が変わるのである。こういった非一様なTL流体の不純物スケーリングは90年代初頭に理論的に示され、カーボンナノチューブなどの実験でも確認されている。この不純物スケーリングの理論は、スケール前の一体の電子が感じるポテンシャル強度が十分に強いか、十分に弱いかの2つの極限で調べられている。ただし一般の多成分TL流体(通常の電子系ならばスピン自由度を含めて2成分である)の場合、相互作用空間の中での散乱振幅のスケール方向が変わる場所(固定点)が両極限で異なるため、両極限の間を固定点がつながるのかなど、まだ明らかにされていない。本年度のわれわれの研究では、不純物を含む2成分TL流体の伝導度を、任意のポテンシャル強度・任意の相互作用の強さで調べる手法を開発し、それらのパラメータ空間でのグローバルな相図をわれわれの手法により決定した。
All 2006 2005
All Journal Article (2 results)
Physical Review B 73
Pages: 235326-235326
Physica B : Condensed Matter (掲載予定)