「天狗草紙」の構想にみる中世日本の<宗>認識と仏法観
Project/Area Number |
04J03622
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Aesthetics/Art history
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Research Institution | Chiba University |
Research Fellow |
土屋 貴裕 千葉大学, 大学院社会文化科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2004 – 2006
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2006)
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Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2006: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2005: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2004: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | 天狗草紙 / 絵巻 / 仏法観 / 釈教三十六歌仙絵 / 聖徳太子 / 達磨 / 和歌陀羅尼 / 歌仙絵 / 鎌倉時代 / 諸宗兼学 / 諸宗和合 |
Research Abstract |
最終年度となる本年度は、本研究の中心課題となる「天狗草紙」の仏法観や<宗>認識の解明に留まらず、広く中世絵画におけるこれらの問題系へのアプローチを試みるべく、考察対象となる時代と作品とを拡大して研究を進めた。 このような関心から特に注目したのは「釈教三十六歌仙絵」という作品である。南北朝期に、真言僧栄海によって制作された本絵巻は、僧侶の和歌と肖像によって全体が構成される歌仙絵の変り種ともいえる作例だが、鎌倉時代後期の「天狗草紙」が内包していた仏法観や世界認識をまた、この絵巻も有していることが明らかとなった。考察は、以下に述べる二段階にわたって進めた。 第一に、「釈教三十六歌仙絵」に描かれた肖像の典拠を解明し、絵巻制作の背景や中世真言僧における文芸の受容やその文化的環境を明らかにした。本絵巻の中でも大きな比重を占めているのは、歌僧とも言うべき歌詠みの僧たちの像である。これら歌僧の肖像のみならず和歌もまた、その典拠が「時代不同歌合絵」に求められることを明らかにした。 第二に、本絵巻成立の背景にある仏教思想を、本絵巻冒頭の達磨と聖徳太子の肖像、及びその背景にある和歌贈答説話から捉えなおした。本絵巻の冒頭詞書でも言及される「和歌陀羅尼観」は、達磨と太子という梵/和の対比に表出され、これが仏法東漸の視覚化と、「和」の優位を宣揚するものであることを、当時の和歌観から明らかにした。 以上の考察は、複数の学会・研究会での口頭発表を経て、「「釈教三十六歌仙絵」と真言僧栄海」、「「釈教三十六歌仙絵」における仏法観と和歌観」という二つの論文にまとめた。本研究は「天狗草紙」の分析を起点として開始されたが、同様の問題意識を共有する絵画作品の考察の必要性は今年度の研究でも明らかである。中世における多様な仏法観の絵画作品での表現を、個別作品の考察を進めながらさらに深めていきたい。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)