Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
1.平成16-17年度の研究において、マクロアレイ解析により同定したクラミドモナス接合子形成時に転写が上昇する遺伝子群(EZYと再命名)について栄養細胞、配偶子、接合子における転写特異性の詳細かつ厳密な再検討を行った。その結果、7個のEZY遺伝子が接合子特異的な転写制御を受けていることがわかった。この7個の接合子特異的遺伝子群について細胞融合不全を引き起こすfus1突然変異株下での転写の影響を調べた結果、5個のEZY遺伝子が細胞融合依存的に制御されている転写プログラムによって制御されており、残りの2個は細胞融合非依存的に転写されていることが分かった。2.今年度の研究では、この二つの遺伝子について詳細な解析を行った。fus1株の影響を受けなかった2つのEZY遺伝子について、鞭毛凝集による接合シグナルが喚起されないimp3突然変異株下でその転写を解析したところ、全ての転写が抑制され、このことから残りの遺伝子群の接合子における転写は接合シグナル依存的な転写プログラムによって制御されていることが示唆された。しかし、これらの遺伝子が雌雄配偶子の凝集時における細胞壁の離脱によって転写が誘導される可能性もあり、それを検討するために野生株及びimp3株の栄養細胞と配偶子においてin vitro細胞壁離脱実験を行った。その結果、EZY遺伝子群の転写は誘導されていることがわかった。これは細胞融合非依存的に転写される遺伝子群の中には、細胞壁離脱による細胞の浸透圧変化によりその転写が制御されている転写グループが存在していることを示唆するものである。このことから、雌雄配偶子の接合過程において、鞭毛凝集に誘起される接合シグナルそのものではなく、細胞融合に先立つ細胞壁離脱によってその発現が時間的に制御されている遺伝子発現プログラムが存在していることがわかった。3.研究を通して、クラミドモナスの雌雄配偶子の鞭毛凝集から細胞融合を経る接合子形成過程には、少なくとも以下の遣伝子発現プログラムが存在し、それぞれが時間的に制御されていることがわかった。(1)雌雄の配偶子の細胞融合依存的に活性化される遺伝子発現プログラム:雌雄の配偶子それぞれにおいて転写因子が合成され、細胞融合において細胞質の因子が混ざり合った時点で雌雄由来の転写因子が相互作用し、接合子特異的な遺伝子の発現をオンにするというモデルが考えられる。(2)細胞融合に先立つ細胞壁離脱により活性化する遺伝子発現プログラム:細胞壁離脱の時点で転写が誘導され、時間的に接合子細胞の形成時初期にタンパク質に翻訳され、機能することが考えられる。現在、これらの結果を論文としてまとめ、投稿中である。
All 2006 2005 2004
All Journal Article (3 results)
Jpn..J.Protozool. 39巻・1号
Pages: 55-59
Plant Cell Physiology (印刷中)
Current Genetics 41
Pages: 304-315