Budget Amount *help |
¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2005: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2004: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
|
Research Abstract |
読解過程において重要な働きをするのが、読みの目的に応じて理解状況をモニターし、どう読むかを調節するメタ認知である。本研究では、読解中のメタ認知の促進をねらった2種類の質問活動が,第2言語としての日本語文章の理解度に及ぼす影響を比較し,メタ認知の働きの実証を試みた。なお,質問作成では,読み手が主体的に質問となる箇所を選んで質問を作るため,質問解答と比べてモニタリングをより働かせる必要があり,その結果文章の要点情報の整理や精緻化が促されると考えられる。 調査は,国内外の中国語を母語とする日本語学習者を対象に行い,重要な部分を選んで質問を作る「質問作成」と重要な部分に関する与えられた質問に答える「質問解答」が,日本語学習者のモニタリングおよび文章理解に及ぼす影響を検討した。その結果,文章理解への影響は課題によって異なり,「質問解答」では文章に明示された再認理解に,「質問作成」では要点理解や因果関係の推論などの再生に,それぞれ効果があることが明らかになった。「質問作成」の要点理解への効果は,文章から「自分で」質問となるところを探し出すプロセスが,文章全体の内容把握に注意を向けさせたことによると考えられた。 さらに,読解におけるメタ認知技能を指導する方法として協働学習に着目し,学習者ペアが話し合いながら「質問作成」を行う過程を分析した。その結果,文章の構成や文章理解,互い質問に関するストラテジーを共有し,対話を通して文章理解が変容し,深まる過程がみられた。学習プロセスにおいて他者の視点の導入や作業プロセスの意識化がおこったことから,協働的な学習を通して,質問作成過程で用いられるメタ認知技能をより明示的な形で体験させることができると考えられた。 本結果は,読解におけるメタ認知の働きの一端を実証し,読解指導への具体的示唆を得るものである。
|