2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本語学習者の説明文理解におけるメタ認知の機能に関する実証的研究
Project/Area Number |
04J05147
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐藤 礼子 広島大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本語教育 / 読解 / メタ認知 / 理解のモニタリング / 質問活動 / 質問作成 / 推論生成 |
Research Abstract |
読解過程において重要な働きをするのが、読みの目的に応じて理解状況をモニターし、どう読むかを調節するメタ認知である。本研究では、読解中のメタ認知の促進をねらった2種類の質問活動(「与えられた質問に答える活動(質問解答)」「質問を自分で作成する活動(質問作成)」)が,第2言語としての日本語文章の理解度に及ぼす影響を比較し,メタ認知の働きの実証を試みた。これまでに第2言語の読解では,質問作成が理解に及ぼす効果は十分に検討されていない。なお,質問作成では,読み手が主体的に質問となる箇所を選んで質問を作るため,質問解答と比べてモニタリングをより働かせる必要があり,その結果文章の要点情報の整理や精緻化が促されると考えられる。 調査は,国内の日本語学校に通う中国出身の日本語学習者(質問群・解答群・統制群)を対象に行った。読後課題の「正誤判断問題」の得点を分散分析によって分析した結果,解答群の成績は無質問群よりも有意に高く(P<.05),質問解答が再認理解を促進することが示された。続いて実施した,「自由再生」の得点では,再生数においては群間に有意な差はなく,質問作成や質問解答の効果がみられなかった。しかし,自由再生を質的に分析すると,作成群は他の群よりも要点部分をより多く再生し(p<.05),さらに材料文の中で明示されない因果関係等の推論を再生した人数が多いことが示された(p<.01,x^2検定)。 モニタリング活性化の違い(質問作成と質問解答)によって異なる理解が促進されることが示された。質問解答が,文章情報を整理させ,明示的な内容に対する理解を促進する一方,質問作成は,材料文に明示された各文の理解や記憶よりも,要点情報の整理や文章情報の関係付け(因果関係など)を促進すると考えられる。本結果は,読解におけるメタ認知の働きの一端を実証し,読解指導への具体的示唆を得るものである。
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Research Products
(2 results)