Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
研究課題の3年目で最終年度であった本年度は、当初の計画通りに1年目、2年目に単離されてきた変異体の詳細な解析を行った。私が本研究課題「モデル植物シロイヌナズナの高DNAメチル化表現型を示す変異体の選抜と解析」を遂行するにあたって、ゲノム中の複数の遺伝子座を高メチル化のターゲット候補として調べたが、その一つに我々がBONSAI(BNS)と呼ぶ遺伝子座がある。この遺伝子座は野生型では低メチル化状態にあるが、近傍にレトロトランスポゾンが挿入されており、このトランスポゾン配列は配列特異的に高度なDNAメチル化を受けている。我々は、このレトロトランスポゾンのエピジェネティック制御が阻害された状況下では近傍のBNS遺伝子が高メチル化を受けてジーンサイレンシングを引き起こすことを見いだしている(佐瀬ら、未発表)。本研究課題で私が単離した変異体にはDNAメチル化酵素、新規のピストン修飾酵素の変異を原因とするものが含まれるが、これらの変異体の背景ではやはりこのBNS遺伝子座に高メチル化が引き起こされることを明らかにしている。このDNAメチル化がどのような因子によって引き起こされているのか、シロイヌナズナの既知の変異体との二重変異体を作製し現在解析を進めている。また、これらの変異体は不稔性、葉の形態変化など様々な発生異常を示すことから、ゲノム中の他の遺伝子座にもエピジェネティック制御の変化を引き起こしていることが推察される。これらの遺伝子座を同定するために発現マイクロアレイ解析を行い、これまでに複数の発現が変化している遺伝子座候補を見いだしている。私は本研究課題において、生物ゲノム中では内在性トランスポゾンやリピート配列にDNAメチル化が偏在していることに注目し、DNAメチル化の標的となる配列とならない配列の特異性を決定している機構とはどのようなものか?という問題に3年間取り組んできた。一般にDNAメチル化は遺伝子発現を抑制し、トランスポゾンの不活化に重要な働きをもつ。一方、DNAメチル化によって生存に必須な遺伝子がサイレンシングを受けてしまった場合、生物にとって重大な脅威となる。私が今回単離してきた変異体の解析結果から推察されるのは、トランスポゾン配列以外の領域へのDNAメチル化の広がりを抑制するような機構の存在である。競争の激しい研究領域でもあるので、今回の研究成果の早期の論文発表を目指している。
All 2007 2006 2004
All Journal Article (3 results)
The Plant Journal 49(1)
Pages: 38-45
実験医学増刊 Vol.24 No.8
Pages: 1220-24
Tanpakushitsu Kakusan Koso 49(5)
Pages: 634-641