Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
本年度は,推論的言語理解の理論的枠組みと,その学際的な応用可能性を提示した。第一に,日本語話者が発話を非字義的に理解することを経験的に示すための準備として,80名の日本語母語者にアンケート調査を実施した。その結果,本研究の前年度までの成果である,先行理論で予測不可能な非字義的意味の種類が存在するという仮説が正しいことが証明された。第二に,先行理論で説明不可能な非字義的意味の種類を分類・分析した。その結果,日本語の日常会話における,すべての種類の非字義的意味理解の理論には,合理性の概念が必要不可欠であることが明らかになった。この合理性とは,聞き手が話し手の発話を「理にかなったものである」と前提して理解するということである。第三に,すべての種類の非字義的意味を説明可能にする理論的枠組みを構築し,以下の4点を明らかにした。 (1)従来理論的に必要であると考えられてきた「話し手の意図」という概念は,実際の発話理解においては必ずしも必要ない。 (2)従来の理論では,「話し手がどのように発話を行うか」という点が重視されてきたが,非字義的意味理解においては,「聞き手がどのように発話を理解するか」という点がより重要である。 (3)聞き手は,常に,話し手の発話を「理にかなったもの」,すなわち,合理的に理解可能なものであるという予測のもと,推論を開始する。聞き手がどのような理解を「理にかなったもの」であると考えるかという点は,聞き手(の認知的状態)に依存する。したがって,推論的言語理解の理論では,非字義的意味理解は聞き手に帰属され,推論を駆動する原理の遵守基準は聞き手によって決定される。 (4)推論的言語理解の理論をより経験的な研究に応用するためには,パラメトリックに処理可能な文脈情報をリストアップすることよりも,聞き手がどのような発話を理解可能なものとして受容できるかという点を解明することが重要である。
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