Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究では,日本農村の共同体のあり方とさまざまな経済制度との関連を検討している.研究成果の「開発経済学から見た自治村落論」(農業史研究,第40号)は,開発経済学的な問題関心とミクロ経済学の枠組みに基づいて自治村落を解釈し,取引統治という観点から自治村落論を開発経済学のなかに位置づけることを試みた.ミクロ経済学的な立場から見れば,機能に注目した自治村落は,社会的な緊密性に基づき,取引を統治する制度を持ち,それを決定・承認する意思決定メカニズムと運用・執行する権限を備えた組織であると理解することができる.そのような自治村落は,近世の村請制を経験する歴史性を持つことで特徴づけられる.村請制は,村落・イエの存続と年貢の立替・融通という2つの課題を村落に投げかけ,それが小農の保護や年貢負担の均等化などの論理を生み出し,これを実現する様々な制度を派生的に誘発することで,村落社会の構造を根源的に規定したと考えられるのではないか.つまり,村請制は村落に対して「取引を統治する制度を生み出すインセンティブ」を与えたという意味で,取引を統治するインセンティブ構造の連鎖の発端となったと考えられる.そして,このインセンティブ構造のなかで,自治村落としての高い自治性と村落の制度による不正行為の統治が実現され,アジアの村落との相違をつくり出す要因となった.ここに,日本の経済発展における自治村落と村請制の歴史的な意義を見いだせると考える.
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