2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本の経済開発における共同体・制度・慣習の役割と形成過程に関する研究
Project/Area Number |
04J10578
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有本 寛 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 小作料減免慣行 / 村落統治 / 地主小作関係 |
Research Abstract |
本研究では,日本農村の共同体のあり方とさまざまな経済制度との関連を検討している.研究成果の「小作料減免慣行と取引費用」(農業史研究,第39号)は,戦前期日本の小作契約に注目し,なぜ定額契約が広範にみられ,またそれに小作料減免慣行が付随していたのかを検討した.契約理論に基づいた分析によれば,日本で広くみられた減免契約は,刈分契約に比べて誘引とリスク分担の観点からは効率的だが,減免にかかる取引費用がかかる.従って,減免契約の採用と普及は,どれ程度取引費用を抑制できるかに依存していた.論文では,私的な地主小作関係への村の介入を日本の小作制度の特徴と捉え,その論理と時間を通じた変化を分析することを試みた.そして,近世においては,村請制の秩序のなかで村が私的な地主小作関係に介入したこと,「温情的」な関係や村の介入・関与が1920年ごろまで続き,これらが減免にかかる取引費用を抑制し,減免契約の採用を可能にしたこと,しかし,減免契約の採用と普及は,「温情的」関係や共同体の紐帯の崩壊にともない,小作争議の勃興にみられる取引費用の高騰によって困難となったことを論じた.この危機は,しかし減免過程の制度化と集団的地主小作関係の構築によって避けられることになる.
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Research Products
(2 results)