Research Abstract |
2000年4月から2005年6月に日本沿岸域3地点で標本採集を行い,計1934個体(三陸120個体,三河1692個体,天草122個体)のニホンウナギを得た.地点ごとの性比を調べた結果,三陸で採集した全ての個体は雌(100%)であり,三河で90.7%,最も南の天草で74.6%であった.次に採集した雌雄のウナギの体サイズを調べた結果,雌(68.6cm,516g)は雄(54.0cm,228g)よりも大きかった.さらに体サイズ,年齢,成長率を採集地点ごとに比較した結果,三河の雄(55.3cm,240g,6.8yr,7.6cm/yr)は,天草の雄(47.5cm,156g,8.1歳,5.4cm/歳)よりも体サイズが大きく,若齢で成長が良いことがわかった.一方,雌の銀ウナギでは三河(71.4cm,580g,7.9歳,8.7cm/歳)は,天草(65.1cm,455g,9.0歳,7.0cm/歳)よりもサイズが大きく,若齢で成長が良いものの,三陸(69.1cm,659g,7.6歳,8.8cm/歳)と三河・天草との間には差が認められなかった.台湾のニホンウナギの銀ウナギは雌雄ともに日本の銀ウナギよりも体サイズが小さい可能性が考えられることから,体サイズにおいても性比同様に体サイズにも緯度クラインが生じている可能性があるものと考えられた.以上、これまでの本研究の結果を総合すると,日本沿岸域に生息するニホンウナギには性,体サイズ,回遊履歴の3つの緯度クラインが存在することが分かった. これらの生物学的特性の差異が,遺伝的な背景を持つかどうか調べるため,これまでウナギ属魚類で公表されている29個のマイクロサテライト遺伝子座について,予備的な解析を実施した。その結果,29個のプライマーセットのうち5個がニホンウナギの集団構造解析に有効であることが明らかになった.
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