Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究課題の目的は、統計モデル多様体に微分幾何学的・位相幾何学的な手法を用いて、よりよいパラメーター推定方法を理論的に考察し、時系列解析から量子情報まで様々な分野に応用することであった。年度は博士論文をまとめる関係で時系列の問題への応用に重点をおくことになった。本年度の実績の概要は以下のようになる。1.ARモデル上の優調和事前分布の存在について本年度結果により決着がついた。これまでに求めていた低次元のARモデルでの正の優調和関数の形や、パラメータ空間の境界近傍での優調和事前分布の振舞いに注目して、一般次数のAR過程に適用できるため、はるかに応用範囲が広がり、我々の手法の説得性も高まることが期待される。また、本研究では、ARモデル多様体は正の優調和関数をもつための十分条件(断面曲率に関する条件)は満たしていないことがすでに示されていた。しかしながら、ARモデル多様体上に優調和関数が構成できたため、断面曲率に関する条件は必要条件とはなりえないこともわかった。微分幾何学の応用という立場からも非常に興味深い。2.本研究では古典的な相関をもっデータから予測分布を構成する問題をベイズの枠組みで取り扱っているが、量子系の場合への拡張も試みている。また、パラメータ推定に注目する限り量子統計における情報幾何学的な特徴づけは行列の非可換性のためにうまくいかないことも知られている。そこで本年度は、よりよい予測分布を構成するという立場から統計モデル多様体の幾何学を考えることとし、量子αダイバージェンスを損失関数にとり最適な予測分布を与えた。解析的な扱いが可能であるため、個々のモデルについて微分幾何学的な構造を詳しく調べ、古典統計の様々な概念を量子系に拡張し特徴づけるのが今後の課題である。
All 2006 2005
All Journal Article (3 results)
Journal of Physics A : Mathematical and General 39
Pages: 14165-14165
Physical Review A 71
Pages: 52323-52323
Physical Review A (発表予定)