2005 Fiscal Year Annual Research Report
統計モデル多様体としての行列の空間の幾何構造に注目した統計理論
Project/Area Number |
04J11481
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 冬彦 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 時系列解析 / 情報幾何 / 量子情報 |
Research Abstract |
1.ARMA過程についてスペクトル密度の漸近展開を用いて、モデル多様体上の正の優調和関数の存在がよりよい推定方式を与えることを証明した。多くの時系列モデルは、ARMAモデルの部分モデルとして与えられるので、これはかなり一般的な成果である。さらにARMAモデルの断面曲率の符号評価を行った。その結果、ARMA(1,1)モデルでは正の優調和関数に基づく事前分布を用いても改善できないことが示された。そこで、より詳細にARMA(1,1)モデルを調べたところ、測地的完備でなくスカラー曲率も正で有界であり、AR(2)モデルとは非常に対照的な幾何学的性質をもつことがわかった。この違いの本質をとらえて一般化することが今後の課題である。 また、本研究では古典的な相関をもつデータから予測分布を構成する問題をベイズの枠組みで取り扱っているが、量子系の場合への拡張も試みている。昨年度の結果に加え、本年度ではより広いクラスの損失関数で最適な予測方法を与えた。また、具体例として、応用上も重要な量子ガウス状態族について計算し、点推定に基づくものよりも真に優れた予測密度作用素を解析的に与えた。 2.古典的な場合、十分統計量は相対エントロピーを不変に保ち、幾何学的な特徴づけが知られているが、量子系では同様の議論は成立しない。そこで、本研究では量子ガウス状態族の場合に量子相対エントロピーと、それから定まる微分幾何学的な量を陽に求めた。特に、スケール因子による漸近展開を用いて主要項がガウス分布族の場合に帰着することを示した。また、ガウス分布族は負の定曲率空間でありスケール不変性をもつことが知られているが、量子ガウス状態族では負の曲率をもつがスケール不変性はプランク定数のオーダーで破れていることも示した。これらの結果をもとに十分統計量の幾何学的な特徴づけを与えることが今後の課題である。
|
Research Products
(1 results)