Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
ダンスを踊る蜂は採餌を行った餌場の位置をダンスにより伝達する。この際彼女らは採餌飛行の問に経験したオプティカル・フロー(視野を横切った視覚情報)量をもとに餌揚までの「距離」を、太陽に対する相対的な位置を感知する太陽コンパスをもとに餌場の「方向」を算出し、ダンスの尻振りの「時間」と「角度」に変換して表す。このようにダンスの発現には、採餌過程で得た感覚情報を統合し、ダンスに変換する過程が必要であると考えられる。昨年見出した、採餌蜂の脳における特異的な神経活動が、採餌過程における感覚情報の統合に関わっている可能性を検討した。この際、採餌行動の違いがダンス行動の違いとして表されることを利用して、ダンス行動とkakusei発現の関係を調べ、採餌蜂のどのような行動成分が脳の活動量と関連があるかを検討した。まず、近くの餌場に通った蜂が踊る「円ダンス」を踊る蜂と、比較的遠くの餌場に通った蜂が踊る「尻振りダンス」を踊る蜂、それぞれの脳におけるkakusei発現パターンを調べたところ、尻振りダンスを踊る蜂よりも円ダンスを踊る蜂において、有意に高いkakusei発現細胞数密度がキノコ体においてのみ認められた。これは近くの餌場に通った蜂の脳で、より多くの数のキノコ体神経細胞が活動していることを示している。さらに、様々に異なったダンスをビデオ撮影し、ダンスの示す餌場までの「距離」の成分と各脳領野におけるkakusei発現量との関係を解析した。その結果、キノコ体におけるkakusei発現量はダンスの示す「距離」と負に相関していた。以上の結果は、採餌蜂の行動の中でも、巣から餌場までの「距離」に関連した行動成分がキノコ体における神経活動と関連していることを示しており、キノコ体における採餌飛行の際の感覚情報の統合がダンスコミュニケーションの発現に重要な役割を担っている可能性を示唆している。
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