Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
現在までに詳細に検討が進められている既存のRasファミリー蛋白質は、細胞外からの刺激に応答したシグナル伝達のON/OFFを担う制御因子として重要な役割を果たしている。私はこのようなRasファミリー蛋白質の重要性に着目し、Rasとの相同性を用いたヒトゲノムデータベースのスクリーニングを行うことで複数の新規Rasファミリー蛋白質を同定した。これらは一次構造上、既存のRasとは異なるユニークな特徴を有しており、特異的な情報伝達経路に関与することが期待される。本年度はこれら新規蛋白質群のうち、動物種をこえて神経組織特異的な発現パターンを示すDi-Ras(A Distinct subgroup of Ras family GTPases)について培養細胞および線虫を用いた解析を行い、以下に示す知見を得た。・酵母Two-hybridスクリーニングによりDi-Ras相互作用因子として様々なペプチドホルモンの成熟および分泌に関与するprohormone convertase 2(PC2)を同定し、両者が分泌小胞上で相互作用する可能性を明らかにした。・ペプチドホルモンの前駆体であるPOMCとβ-Galを融合したレポーター蛋白質を作製して分泌実験を行い、Di-Rasの過剰発現によりペプチドホルモンの分泌が亢進することを明らかにした。・Di-Rasの相同因子であるdrn-1の機能を欠損する線虫の表現型を解析した結果、drn-1変異体において運動神経からのアセチルコリンの放出が減少していることを明らかにした。PC2をはじめ神経ペプチドの放出に関与する因子との二重変異体を用いた予備的な実験から、drn-1変異体における表現型は神経ペプチドシグナルの低下によるものである可能性を見いだしており、Di-Rasが個体レベルにおいても神経ペプチド(ペプチドホルモン)の分泌に促進的に働いている可能性が示唆された。
All 2004
All Journal Article (1 results)
J.Cell Sci. 117
Pages: 4705-4715