Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
成長ホルモンやインスリンなどペプチドホルモンは、内分泌細胞のトランスゴルジネットワーク(TGN)で内分泌顆粒内へ選別輸送され、顆粒内に貯留される。内分泌細胞がグルコースなどの細胞外刺激を受けると分泌顆粒は細胞膜と融合し、その内容物であるペプチドホルモンを放出する。NIHのLoh博士などはプロホルモンプロセシング酵素の一つカルボキシペプチダーゼE(CPE)がホルモンを顆粒内へ選別する受容体であるという説を提唱した。申請者の研究室では更にグラニン蛋白の一つセクレトグラニンIII(SgIII)が選別受容体としクロモグラニンA(CgA)を顆粒内に導くことを示した。しかし選別輸送の研究で頻用されている副腎髄質由来PC12細胞にはSgIIIは存在しないとされ、CgAがPC12の顆粒に入る理由が謎であった。本研究では、PC12でSgIIIの代わりとして機能する選別受容体を探索し、CgAと結合するSgIII様受容体を同定した。SgIII様受容体は他の内分泌細胞で発現しているSgIIIよりサイズが大きいシングルバンドであり、アミノ酸配列の結果プロセスされていないSgIIIと判明した。次にSgIIIにFLAGタグをつけ、HAタグをつけたCgAとPC12で共発現させた。高コレステロール結合ドメインを欠く変異SgIIIをCgA-HAに対して過剰に発現させると、CgA-HAの顆粒輸送がブロックされた。従ってPC12でも他の内分泌細胞と同様にSgIIIがCgAの顆粒内輸送を行うことが明らかとなった。更にSg」に対するSiRNAを作成し、Sg」を高発現する下垂体由来AtT-20細胞のSg」発現レベルを低下させた。CgAはカルバコール(アセチルコリンアナログ)刺激により分泌されるが、SiRNA処理AtT-20ではCgAはカルバコール刺激があってもなくても分泌されるようになる。つまり、Sg」発現を低下させると分泌顆粒形成が障害されて、CgAは刺激の有無にかかわらず構成性経路から継続的に分泌されるようになる。