Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2006: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Research Abstract |
昨年度に引き続き,木部繊維の二次細胞壁および引張あて材ゼラチン層(G層)におけるセルロースミクロフィブリルが,樹木の成長様式や生態(バイオメカニックス挙動),さらには木材の材料特性に及ぼす役割を実証的に考察した.本度年は,昨年度に引き続き,特異な物性とバイオメカニックス挙動を示す引張あて材繊維(とくに明確なゼラチン層を形成するゼラチン繊維-以下G繊維)に着目し,エックス線回折技術,高解像度電子顕微鏡観察技術,さらにはフィールドでの成長応力測定(解析)技術を利用して,上記研究課題の遂行をはかった.フィールド測定とサンプリングは,我が国においてはハウチワカエデを,フランス領ギアナの熱帯天然林においては,当研究室とフランス・モンペリエー大学との共同研究(日本学術振興会による二国間共同研究プログラム)を通じて,さまざまな形態的特徴と挙動を示す各種の引張あて材試料を入手した。その結果,広葉樹あて材のG繊維では,細胞壁に高純度かつ高配向性のセルロースミクロフィブリルからなるゼラチン繊維を形成することによって,セルロースミクロフィブリルの収縮力を,効率的に負重力屈性発現のための力へと変換していること,G層は含水状態で煮沸すると繊維軸方向に著しく収縮すること,乾燥によってもやはり繊維軸方向に縮むこと,しかしながらいずれの場合においても,結晶レベルでは収縮しないことなどを明らかとした.巨視レベルでは分子軸に沿う方向に寸法変化するが,結晶格子定数に変化がないことは新たに確定した謎である.どうやら,G層の水膨潤ゲル特性とその微細構造が謎を解明するカギとなるらしいが,今後の検討が必要である.ここでは,水膨潤G層が加熱により収縮するのは,非結晶領域のエントロピー弾性に基づく挙動らしいこと,乾燥による極度の収縮と硬化は,非結晶部分の水分脱着によるキセロゲル化らしいことを指摘しておくにとどめる.
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