共通感覚の系譜学-その認識論的、美学的ならびに政治的射程についての総合的研究
Project/Area Number |
06J10070
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Aesthetics/Art history
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門林 岳史 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2006 – 2008
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2008)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2008: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2007: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2006: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 共通感覚 / 感性論 / 批評理論 / 精神分析 / ジークムント・フロイト / ハインリヒ・ヴェルフリン / I・A・リチャーズ / メディア論 / マーシャル・マクルーハン / モダンズム / ニュー・クリティシズム / 構造主義 / 戦後アメリカ文化 |
Research Abstract |
三年間の本研究課題の最終年度である本年度の主な成果は、これまでの二年間の研究成果を主に口頭発表のかたちで公にしたことである。その過程で関連研究者とも有意義な意見交換を交わすことができ、日本学術振興会特別研究員として研究を進めた三年間の成果を今後のさらなる研究へとつなげていくにあたって重要な指針を得ることができた。 まず、前年度より引き続き、今年度の4月まで、フランス、パリ第七大学に渡航して進めていた精神分析に関する研究をめぐっては、その最初の成果を学会発表「フロイトのメタ心理学の身体論的読解」において発表した。本発表は、フロイトが一連のメタ心理学の論文において精神分析の基礎づけを試みる過程のなかで潜在的に提示していた身体をめぐる形而上学的な認識の現代的な射程を確定しようと試みるものである。20世紀初頭の諸言説における美学=感性論的な構築を言説分析の手法で分析し、その現代的意義を明らかにする本研究課題にとって、フロイトによる精神分析学の理論的構築に内在する感性論的認識の問題は重要な位置を占める。本発表は、そうした研究の方向性の最初の一歩であり、人文研究者のみならず精神医学者も多く参加するフロイト思想研究会での発表と討議から得たものを今後の研究に活かしていきたい。 次に、学会発表「形式主義と批評言語の心理学化」においては、同じく20世紀初頭の美学的言説のうち、ウィーン学派を中心とする世紀転換期ドイツの美術史におけるフォーマリズムおよび、20世紀前半に英語圏で確立され、文学批評の主流の言説としての地位を占めたニュークリティシズムを扱った。これら二つの批評言語はそれぞれ、造形芸術および文学に対する批評言語に強力な形式主義の方法を導入したが、とりわけその初期の理論家には、形式主義を基礎づけるにあたっての心理学主義への傾倒が顕著に確認される。本研究はそうした形式主義と心理学主義との関係を分析することで、芸術作品に対する美学的理解がどのようなかたちで同時代の<こころ>をめぐる科学的言説の影響を被っていたかを明らかにする試みである。本研究が課題として掲げた「共通感覚の系譜学」は、もとより広範囲の言説を対象とした調査を必要としており、三年間の研究期間において扱うのはそのうちの時代的にも領域としても限定された一部分であることは当初の研究計画にも明記したことであるが、本研究も、上記の精神分析関連の業績とあわせて、今後本研究を継続し、さらなる成果を上げていくにあたっての出発点としてたしかな礎を築きえたものと捉えている。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)