Project/Area Number |
08J01465
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Condensed matter physics 2
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 直人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2008 – 2010
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2010)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | 光誘起相転移 / 強相関電子系 / 非平衡 / 動的平均場理論 / 冷却原子気体 / 量子モンテカルロ法 / 国際研究者交流 / スイス / 金属絶縁体転移 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、レーザー光などの強度の強いac(交流)外場によって駆動された強相関電子系の非平衡物性を理論的に解析した。以下に具体的に記す。 強相関電子系にレーザー光を照射するとその物理的性質が劇的に変化する光誘起相転移と呼ばれる現象が、近年発展した超高速ポンプ・プローブ分光により観測されている。光による制御では系を非平衡状態に駆動するため従来の平衡状態の物理を超えた新たな物性科学を拓くと期待される反面、非平衡状態という性質そのものがその理論的な理解を阻んできた。申請者は昨年度までに開発してきたフロッケ動的平均場理論という理論手法を拡張して、光が照射されているときの電子系の光学伝導度スペクトルを求める方法を確立した。光学伝導度はポンプ・プローブ反射率分光で測定され、系のキャリアの様子を表す非常に重要な物理量である。特に頂点補正と呼ばれる量子多体効果を非平衡状態において初めて整合的に取り込んだ。今まではファリコフ・キンボール模型という特殊なモデルでしか計算できなかったものが、一般のモデルで適用可能になった。これを実際に強相関系の典型的なモデルであるハバード模型に適用し、非平衡に特有なスペクトルの振る舞いを発見した:(i)ポンプ光の周波数に依存して、光誘起絶縁体・金属転移を示すドゥルーデ状のピークが現れたり、バンド内反転分布を示す負のスペクトルが現れたりする。(ii)ポンプ光の周波数が電荷移動エネルギーより低いときに、フロッケバンドからの寄与によりミッドギャップ吸収が起きる。(iii)ポンプ光とプローブ光の周波数が一致するときに共鳴が起き、ファノ型の非対称ピーク構造を示す。共鳴幅はエネルギー散逸の幅で決まる。これらの結果は強相関・非平衡の新たな物性を明らかにするものであり、今後の実験的・理論的研究を促すものと期待される。 また申請者は、電子系の非平衡定常状態で厳密に成り立つ非平衡関係式、特に光学和則と原田・佐々関係式を導き、具体的に非平衡厳密可解模型で成り立っていることを確認した。前者はキャリア数とスペクトルの総和の関係づけ、後者はエネルギー散逸と揺動散逸関係の破れを関係づける。非平衡状態では線形応答を超えて一般的に成り立つ非自明な法則がほとんど知られていないために、実験結果を解釈したり理論的な基礎付けをするのが困難であった。今回導かれた関係式はそれらの重要な指標として役立つと考えられる。
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