Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
本研究課題の主題の一つである測度論的Riemann構造の研究の一環として,Sierpinski gasket上の測度論的Riemann構造について前年度までの成果を受けさらに詳細な解析を行い次のことを証明した. (1)頂点xを中心とする半径rの測地球の体積をrで割った商が,rが0に近づく極限で(xに応じて決まる)正の定数に収束すること. (2)対応する拡散過程X(t)を頂点xから出発させるとき,X(t)の出発点xからの距離の平均は,時刻tを0に近づける極限において1次元Brown運動の場合と同様の挙動を示す. (3)対応するLaplacianの固有値の増大度がSierpinski gasketの(調和測地距離に関する)Hausdorff次元のべきで(修正項なしに)与えられる. (1),(2)により調和測地距離のより精密な漸近挙動が明らかになった.また(3)はLaplacianの固有値に関する基本的な問題意識であるWeyl型漸近挙動を考える上での大前提となる事実であり,今後の更なる研究の動機付けとして重要である.一方,当初の目標であるSierpinski gasket以外の自己相似フラクタルへの一般化については,京都大学の日野正訓氏との共同研究が進行中であるがまだ完成には至っていない.この他,フラクタル上の熱核の解析に関連して,nested fractal上の標準的な熱核p(t,x,y)について,p(t,x,x)のtを0に近づける極限での漸近挙動には,(古典的なRiemann多様体上の熱核とは異なり)一種の振動が見られることを証明した.Sierpinski gasketに対してはこの結果は平成20年度中に既に得られていたが,本結果はこれをより広くnested fractalの枠組みで(部分的に)一般化したものである.フラクタル上の熱核がこのように振動を有することの証明は当該分野における10数年来の未解決問題であったが,本研究はこれをnested fractalという一般の枠組みで肯定的に解決したことになる.
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