Project/Area Number |
08J10778
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
数理物理・物性基礎(理論)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂田 綾香 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2008 – 2010
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2010)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | スピングラス / 進化 / レプリカ法 / Partial Annealing / ランダム系 / フラストレーション / 理論進化 / 交換モンテカルロ法 / 相転移 / 二重平均の統計力学 |
Research Abstract |
本年度は、スピン模型を用いた適応的進化の研究についてスピングラス理論を用いた解析を行い、これまでの三年間にわたる研究をまとめた。採用一年目の研究においては、断熱的二温度系の進化モデルが、ある中間温度のノイズ環境下において特徴的な振る舞いを示すことを数値的に確認した。二年目の研究においては、一年目とは異なる断熱的二温度系の模型を導入して解析を行った。この模型では、中間温度領域は存在せず、温度が減少するほど安定な表現型発現が得られるという結果であった。したがって、一年目の研究で見られた結果を得るためには、模型に対してある条件を課すことが必要であることが明らかになった。具体的には、断熱的二温度系は遅い変数である遺伝子型(相互作用配位)の時間発展を支配する関数と、表現型(スピン配位)のエネルギーの相関により分類されるということである。この結果踏まえ本年度は、初年度に導入した模型について、ある変形を行うことでレプリカ法による解析が可能になることに着目し、変形模型を導入して解析を行った。研究の結果、初年度の研究と同様の、ある中間温度のノイズ環境下における特殊な振る舞いが見られ、さらにその温度領域はレプリカ対称な相として特徴付けられることが明らかになった。これまで数値的に確認されていた、中間温度領域における特徴的な進化に対して、スピングラス理論におけるレプリカ対称性という概念を通して説明を与えた。初年度に得られていた結果は、レプリカ対称な系が持つと期待される一般的な件質と矛盾無く一致するものであり、本年度の研究は進化と適応を熱力学的な転移と関係付けて理論的に説明したことに大きな価値があると考えている。 ここまで、本研究では遺伝子型から表現型が発現する過程におけるノイズの効果が進化に及ぼす影響を議論してきた。断熱的な二温度系のスピングラス模型において遺伝子型と表現型の進化を表し、スピングラス理論による解析を行うことで、レプリカ対称性という概念を進化的に解釈した。本研究が示したことは、表現型発現過程においてある程度の揺らぎが存在する場合、変異に対する頑健性が進化を通して獲得されるという可能性である。この点は、今後実験的にも再現されるであろうと期待される。また模型の解析において、断熱的二温度系におけるレプリカ法の解析を拡張した。この拡張された理論は、推定の問題をはじめとして、様々な工学的な応用研究で用いられると考えている。
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