Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
【具体的内容】今年度は,広汎性発達障害の診断を受け,精神遅滞を伴わない成人臨床群(高機能自閉症,アスペルガー症候群を持つ人)を対象に,4種類の純音によって誘発されるM100と呼ばれる基礎的な聴覚情報処理を反映する脳活動をmagnetoencephalography(脳磁図)を用いて計測した.その結果,臨床群のM100は,定型発達に比べて遅延する傾向があることが明らかになった。また,M100の主要な信号源(発生元)は左右の側頭葉であるが,臨床群は左側頭葉信号源におけるM100強度が右側頭葉信号源におけるM100強度よりも強く,この左優位性は定型発達には見られなかった.更に,この左側頭葉信号源におけるM100強度と,感覚過敏,自閉症的認知傾向,知的機能との相関を調査したところ,言語性知能と有意な正の相関が見いだされた.【意義および重要性】精神遅滞を伴わない広汎性発達障害成人を対象としてM100を計測した研究はこれまでになく,広汎性発達障害の子どもから青年を対象とした先行研究と一致する点(M100の遅延)と異なる点(左側頭葉の優位性)の両方を見いだしている.この結果は,広汎性発達障害の神経発達において,比較的常に生じる特異性と,発達あるいは知的機能に応じて生じる特異性が存在することを示唆する.このことは,広汎性発達障害の神経活動の発達的変化に関する知見を提供する点で意義がある。また,広汎性発達障害臨床群に特有な左半球優位性に関連して,言語性知能の高さがあることを示唆する結果を得たことは,かなり基礎的な音入力に対する反応が,高次の知能に関連することを示唆する.低次な聴覚情報処理のトレーニングが,高次の読み書き機能を改善するという研究が存在するが,本研究の結果もこれを間接的に支持するものであり,将来的に広汎性発達障害の言語障害に対する臨床的介入に貢献しうるものである.
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