Project/Area Number |
09J04290
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Asian history
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 竜也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員PD
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Project Period (FY) |
2009 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 中国ムスリム / スーフィズム / 内丹 / 劉智 / 楊保元 / 朱子学 / イスラーム / カーデリィー / 門宦 / 道教 / 中国イスラーム思想史 / 異文化交渉 / イブン・アラビー / カーディリーヤ / 土着化(中国化) |
Research Abstract |
今年度の業績としては、第一に、昨年度に入手した中国民間所蔵ペルシア語イスラーム神秘主義文献『霊智の要旨』の分析をおこない、「中国民間所蔵ペルシア語スーフィズム文献『霊智の要旨』-内丹道教と対話する漢語イスラーム文献『綱常』の-原典-」を発表したことが挙げられる。同論文では、『霊智の要旨』に内丹道教の影響が見られることから、その著者が道教との対話を好んだ中国のカーディリーヤ派スーフィーであった可能性を指摘した。また、同書が、楊保元(1780-1873)の漢語イスラーム文献『綱常』をはじめとする中国のカーディリーヤ派スーフィーの漢語イスラーム諸文献の典拠となっていたことを明らかにした。さらに、『霊智の要旨』の全文について日本語訳注を施しペルシア語テキストを提示した。 この論文は、中国西北部のカーディリーヤ派、とくにその「中国化」の実相を明らかにしようとした本研究の課題を、相当程度前進させたといえる。とはいえ、中国のカーディリーヤ派の思想を劉智の思想からの展開の上に位置づけるというもう一つの課題が十全に遂行しえなかったことは、惜しまれる。ただし、その基礎を強化する作業として、「イスラームの「漢訳」における中国伝統思想の薫習-劉智の「性」の朱子学的側面」を発表することができた。 同論文では、劉智思想における朱子学の影響について論じ、次のような結論を得た。すなわち、劉智は、非ムスリム中国人の理解を得るために、朱子学の発想に近い、ナサフィーの万人帰真説の成立可能性を補強しようと企てた。それによって劉智の「性」は、ダーヤのルーフ概念を基礎としながらも、朱子学の「理-分殊」の特徴をも帯びることとなった。そしてそれは、劉智の性が、ダーヤのルーフのような具体的存在者ではなく、朱子学の「性」のような原理の類として構想されることを、要請した。
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