piRNAの機能解析に基づくカイコ性決定・胚休眠機構の解明
Project/Area Number |
09J05370
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Applied entomology
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河岡 慎平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2009 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2011: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2010: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | カイコ / W染色体 / 性決定 / piRNA / トランスポゾンサイレンシング / 生殖巣 / トランスポゾン / 低分子RNA / PIWI-interacting RNA / インフォマティクス |
Research Abstract |
カイコの性は、雌特具的な性染色体であるW染色体によって強力にコントロールされており、W染色体が1コピーあれば雌性が決定される。このことから、W染色体には強力な雌決定因子がコードされていると考えられてきた。しかしながらごく最近まで、W染色体に由来するタンパク質コード遺伝子はおろか、転写物さえ同定されていなかった。その理由として、W染色体が高密度のトランスポゾン配列群によって占拠されている、ということが挙げられる。このことにより、W染色体の高解像度一次配列を得ることは不可能であると考えられている。 これまでに行った研究では、W染色体に含まれるトランスポゾンの組成をpiRNAの発現解析データをベースにして予測する、という手法を考案し、各種W染色体変異体の解析を併用することにより、性決定領域に近い領域に座乗するトランスポゾン群ならびに、それらに由来するpiRNAを同定することに成功した。本年度はまず、これまでに得られた知見を論文発表することをめざし、"The silkworm W chromosome is a source of female-enriched piRNAs"をRNA誌に発表することができた。本年度は、W染色体に由来するpiRNAと性との関係を調べるべく、カイコ新規変異体KGの解析を行った。KG系統は2010年に藤井らによって単離された系統である。KG系統の雌は部分的に雄化することが知られており、KG系統の変異はW染色体にマップされている。私は、このKG系統が、W染色体とpiRNA、そして性との関係を調べるための格好の材料であると考え、その性状を調査した。Doublesex(dsx)遺伝子は進化的に保存された性分化に関与する転写因子であり、dsxmRNAは性特異的なスプライシングを受ける。興味深いことに、KG雌の卵巣においては、雄型と雌型両方のdsxmRNAが発現していることが判明した。また、KG雌の卵巣においては、精巣特異的であることが知られている複数の遺伝子が異常に発現していることが分かった。すなわち、KG-W染色体変異によって、dsxのスプライシングパターンに異常が生じ、卵巣において部分的な精巣特異的トランスクリプトームが観察されると考えられた。私のこれまでの研究により、w染色体がpiRNAの源であることが分かっている。つぎに、KG-W染色体変異がpiRNAの性状に与える影響を調査した。次世代シーケンサとインフォマティクスを駆使した解析の結果、性決定領域付近に由来するpiRNAの一部の発現がKG系統の卵巣で有意に減少していることが判明した。したがって、KG-W染色体変異は、piRNAの組成に影響するものと考えられた。最後に、KG雌卵巣におけるトランスポゾンの発現を調査した。すると、KG雌卵巣では、多くのトランスポゾンが過剰発現していることが明らかとなった。本研究は、"Altered expression of testis specific genes, piRNAs, and transposons in the silkworm ovary masculinized by a W chromosome mutation'"として、BMCGenomics誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究により、piRNAに関する基礎的な知見のみならず、その性決定経路との関わりがはじめて明らかとなった。また、下記の通り、下記の通り、本年度は5報の関連論文を発表した。これらの成果は、客観的にみて、非常に生産的であり、申請者自身これほどの進展は予期していなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、piRNAがどのようにつくられるか、どのようにトランスポゾンを認識するか、そしてW染色体ならびに性決定経路に関与する可能性が浮き彫りとなった。次なる課題は、piRNA経路と性決定経路のより直接的な関わりを明らかにすること、そして、その作用機序を明らかにすること、の2点である。この2点を明確にするためには、まず、カイコの性がどのようにして決まるかを明らかにすること、そして、性決定に関するアッセイ系の確立が必要不可欠である。これを達成するために、カイコ初期胚を用いて、性が決まるタイミングを調査し、また、RNAiなどの手法により性転換を引き起こすことができるようなアッセイ系を確立する必要があるだろう。それらの研究を行う際も、本研究により得られた基礎的な知見は重要な役割を果たすと考えられる。
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Report
(3 results)
Research Products
(10 results)