Project/Area Number |
11J02829
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
芸術学・芸術史・芸術一般
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
松永 伸司 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2011 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2012: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2011: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | ビデオゲーム / 美学 / 芸術形式 / 芸術の定義 / フィクション / インタラクティブ / 行為 / 芸術の哲学 / ゲームシステム / 空間 / 時間 |
Research Abstract |
年度前半は、ビデオゲームのプレイの日常的記述において、しばしば虚構世界内の行為が現実のプレイヤーに帰されるという言語使用上の事実を研究した。虚構的行為をプレイヤーに述語づける文は意味論的にカテゴリ錯誤を犯しているが、それは明らかに語用論的内容を持つ。この語用論的内容を分析する仕事は、すでにいく人かの哲学者が試みている。彼らはいずれもビデオゲームのインタラクティブなフィクションとしての特徴の観点から虚構世界内行為文の問題を論じているが、そのアプローチは十全な回答を与えない。本研究では、ビデオゲームのプレイの記述において虚構世界内行為文が生じる理由が、そのフィクションとしての特徴ではなくゲームとしての特徴にあることを論証した。そのような観点によって、虚構世界内行為文の意味論的な擁護およびそのような文が生じる理由の十全な説明が可能になる。 年度後半は、ビデオゲームを美学の対象とすることの妥当性を「ビデオゲームは芸術か」という広く提起される問いの定式化を通して論じた。この問いの実例は多数あり、それへの答えはいずれも特定の芸術の定義を前提している。しかし通常「芸術の定義」と呼ばれるのは芸術作品の定義だが、「ビデオゲームは芸術か」への答えに必要なのは芸術形式の定義である。それゆえ本研究では、まず芸術形式の定義を考察し、それからその条件をビデオゲームが満たすかどうかを検討した。芸術形式の必要十分条件は、(a)その形式を持つことで芸術作品であるようなものが存在すること、(b)その形式が主に芸術作品を作るために意図的に採用されるような慣習が存在すること、の二点である。ビデオゲームは(b)を十分に満たす。また、ビデオゲームがその形式によって芸術的性質に寄与するしかたについての試論にもとづけば、ビデオゲームは(a)をも満たす。したがって、そのかぎりで「ビデオゲームは芸術である」という答えは正当である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度前半は、前年度に引き続き、ビデオゲームの受容における意味作用の特殊性の研究を順調に進められた。年度後半は、ビデオゲームを取り巻くより広範な問題として、ビデオゲームの美学ないし芸術の哲学の対象としての妥当性を研究した。
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Strategy for Future Research Activity |
ビデオゲームの受容における意味作用の特殊性を分析するにあたって使用した諸概念を、より精緻に定式化したい。また、その概念枠を用いて、アナログゲームとビデオゲームの共通性と差異性、いわゆる「ゲーム性」概念の分析、ビデオゲームにおける物語の特殊性、などのより個別的な主題を論じたい。
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