Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
ホンモロコは高温環境下では遺伝的雌が機能的雄へと分化する,温度依存型性決定様式(TSD)を持つことが報告されている。これが全雌生産への障害となっているが,詳細なメカニズムは未解明である。よって,本研究では本種の発育初期における飼育水温の変化が本種の性分化関連遺伝子の発現動態に与える影響についてリアルタイムPCRを用いて調べた。我々が以前に単離したホンモロコの性分化に関与する,雌性遺伝子42Sp50,Foxl2,Cyp19a,雄性遺伝子Dmrt1を対象として実験を行った。温度処理は孵化日(水温20℃で5日)から高温処理区(25℃および30℃)と低温処理区(15℃)で飼育した試験区とTSDの影響のない20℃で飼育した対照区を設定した。それぞれの試験区について孵化日前日,孵化日,孵化後1,3,5,7,10日の各10尾について仔稚魚1尾からRneasy mini kitを用いてトータルRNAの抽出を行った。抽出したトータルRNAはcDNA合成後,△△C_T式リアルタイムPCRに供した。また,各遺伝子の相対定量のための内在性コントロールにはβ-actinを使用した。高温処理区,低温処理区ともに各遺伝子の発現量は対照区(20℃)と比べ,減少していた。これは,飼育水温の変化が本種の各性分化関連遺伝子の発現を抑制することを示している。興味深いことに,水温処理によって雄性遺伝子であるDmrt1の発現量も抑制されていた。さらに,各試験区における遺伝子発現には明瞭なピークが見られ,対照区,25℃区では孵化後5日齢,30℃区では1日齢となっていた。それぞれの試験区における遺伝子発現ピークの時期は飼育水温による成長速度の差によるものと考えられた。また,遺伝子発現のピークは各試験区における後期仔魚期への移行期と一致していた。本報告はホンモロコにおける温度処理下での遺伝子発現動態を調査した初の研究報告となる。今後,得られた結果から,全雌生産の最適な条件を見つけることにより,ホンモロコのみならず,TSDを持つ養殖生産魚の付加価値向上に貢献できるものと考えている。
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