Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2002: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2001: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
本研究は,魚類耳石の左右対称性のゆらぎ(Fluctuating Asymmetry, FA;ランダムな方向性を持つ非対称性)が,個体群が経験した環境ストレスを定量化に表しており,FAで指標される環境ストレスの程度が生活史初期の成長速度や生残率を通して新規加入量を左右するとの考えに基づいて,FAを指標として天然個体群の新規加入量推定を試行するものである。飼育と天然採集によってもっとも充実した標本が得られたカタクチイワシ仔稚魚に焦点を当てて解析を行った。 カタクチイワシ仔稚魚の耳石について,表面積,周長,長軸長,短軸長のFAを求め、同時に耳石日輪から個体別の成長速度を求めた。その結果,4計測値すべてが成長速度と負の相関関係を示す傾向にあり,表面積と周長のFAは統計的に有意な負の相関関係を示すことがわかった。この結果は,低水温や低餌料密度によって成長速度が低下すると,耳石形態のFAが大きくなることを示している。 一方,1998年に東北沖で採集した仔稚魚群と,1年後の1999年にそれが成長した成魚群を比較した結果,仔魚期に成長速度が大きかった個体が選択的に生残して成魚群を形成したことがわかった。これは,仔魚期に成長速度が大きく,したがってFAが小さい個体の生残確率が高かったことを意味している。 以上の結果から,仔魚期末の耳石形態(表面積と周長)のFA値から,ある年の仔稚魚群の生き残り確率を求めることが可能であることが示された。しかし,耳石形態のFA値を個体の成長速度に対してプロットすると個体差がかなり大きく,FA値による新規加入量予測結果はかなりの幅を持つことになる。この方法による新規加入量予測は,初期生残率に大きな変動がある場合には有効であると考えられた。
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