塩類風化が進行する遺跡構成材料からの効果的な脱塩方法の開発
Project/Area Number |
19K01135
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03060:Cultural assets study-related
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
脇谷 草一郎 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (80416411)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 塩類風化 / 脱塩 / 溶質移動 / 電気電導度 / 硫酸ナトリウム / 塩化ナトリウム / 元素マッピング / 浸透圧 / 粘土鉱物 / 湿布材 / 引張強度 / 電気伝導度センサー / 力学特性 / 電気伝導度 / 蒸気圧降下 / 糖 / パルプ / 水分移動 / 塩分篩効果 / 熱水分溶質移動 |
Outline of Research at the Start |
地盤とつながった状態で置かれている磨崖仏や露出展示された遺構では、石材や土などの材料表面で塩が析出することで、材料表面の破壊がしばしば引き起こされる。とりわけ、磨崖仏や装飾古墳のように、材料表面に彫刻や装飾が施されているものでは、表面一層の滅失は文化財的価値を大きく失うことになる。塩析出による遺構の劣化を抑制するためには、塩析出を抑制する温熱環境を実現するとともに、遺構表面に濃集した塩を除去することが効果的と考えられることから、本研究では遺構に含まれる塩分を効果的に除去する手法の開発を試みる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は石材やレンガなどにおいて、①塩析出による材料破壊のメカニズムを検討するとともに、②材料の破壊を抑制するための脱塩の効果を検討するための基礎実験を引き続き実施した。①では、材料表面において塩析出に至るまでの塩蓄積の過程を定量的に把握することを目的として、下端を塩化ナトリウム水溶液に浸漬した円柱状石材試料の上端を蛍光X線分析装置で二次元の元素マッピング分析をおこない、塩素の検出強度変化から塩の挙動を推定した。その結果、材料表面における塩の析出に至るまでの過程として塩濃度が増加する過程もある程度定量評価が可能である結果を得た。また、塩が析出した際に、材料表面におよぼす応力の推定を目的として、石材および主な塩を対象に、接触角の測定からこれらと水の界面自由エネルギーを算出した。②では、パルプなどの貼付材を用いた脱塩方法や電気的脱塩法を適用した際に、どのように材料内部において塩が移動するのか評価するために、電気的脱塩法を適用したレンガ試料の二次元元素マッピング分析をおこない、脱塩による材料内部での塩化ナトリウムの移動の可視化を試みた。その結果、一次元のみならず試料の鉛直方向による塩移動の差異も含めた、脱塩による二次元の塩移動を可視化することができた。一方で、陽イオンと陰イオンの挙動については更なる検討を要する結果を得た。さらに、遺跡現地において塩析出による劣化箇所および劣化の進行速度を簡便にモニタリングする手法として、SfM/MVSによる三次元モデルの適用を検討した。ここではデジタルスチルカメラによる画像データをもとにSfMによって作成した三次元モデルの精度検証を行うとともに、塩害が進行するレンガ壁を対象に調査時ごとに作成したSfMによる簡易三次元モデルの差分を算出することで、劣化箇所および劣化速度の定量化を試み、実用上では十分な情報を取得できることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで塩類風化の調査を実施してきた大分市の磨崖仏を対象として、効果的な脱塩方法を検討するために、1)脱塩材料・手法、2)脱塩を実施する時期とその効果を検討するため、電気電導度センサーによる材料内部塩蓄積量の推定方法、について検討してきた。これらを磨崖仏が保存されている実環境下で実践するため、現地に磨崖仏を模した同質石材試料を設置し、この石材試料を対象とした水分・溶質移動のセンシングを実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染症対策の影響により、現地での試験体設置、およびモニタリング調査に大幅な遅延が生じた。一方で、この間、現地調査が実施可能で、塩類風化が進行するレンガ倉庫を対象に同様の調査を実施するとともに、蛍光X線分析法を用いた塩移動の定量化・可視化など脱塩方法に関する基礎実験を継続して実施したことから、上記の進捗状況とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺跡において適切な脱塩を実施するために、多孔質材料中における水分・溶質移動を推定するモデルの高精度化を目指す。そのために、昨年度実施した蛍光X線分析法による凝灰岩中の塩移動の定量化・可視化実験を対象に、試料中の塩蓄積過程をモデルで再現することが可能であるのか、共同研究者が提案するモデルから検討する。さらに、このモデルを用いて、適切な脱塩方法の検討をおこなう。また、フィールド調査として、上記大分市の磨崖仏において、同質石材で作られた模擬石仏を設置し、実環境下での試験体中の水分・溶質移動のモニタリングをおこなう。この測定結果を数値計算モデルで再現可能か検証をおこない、本モデルの妥当性を検討し、一層の高精度化を目指す。
|
Report
(4 results)
Research Products
(22 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 月刊文化財2022
Author(s)
脇谷草一郎(分担執筆)、文化庁編集
Total Pages
60
Publisher
第一法規
Related Report
-