Environmental History in England: Technological Solution and Discursive Conflict in Late-Nineteenth Century Coal Smoke Problem
Project/Area Number |
19K13319
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03010:Historical studies in general-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
春日 あゆか 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (30792220)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 煤煙 / 大気汚染 / イギリス / 19世紀 / 統計 / 環境 / 歴史 / スモッグ / 石炭 / 気候変動 / コークス / 技術 |
Outline of Research at the Start |
19世紀イングランドでは、蒸気機関の使用拡大と人口増加の結果、煤煙(大気汚染)問題が深刻化していった。この煤煙問題の解決策として提示されたのが、煤煙対策技術(完全燃焼を目指した炉の改良あるいは煙からの不純物の除去をめざす技術)であった。この煤煙対策技術が特に19世紀後半にどの程度実用性を備えていたかを手掛かりに、技術的解決をめぐる対立がなぜ解消されなかったのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は新型コロナウイルス感染症のために中止していた史料調査を再開し、9月と3月にイギリスで調査を行った。シェフィールド、リヴァプール、マンチェスターの文書館においてシェフィールドとリヴァプールに関係する19世紀煤煙の史料、ロンドンの国立文書館で鉄道の燃料使用に関する史料を収集した。 この史料調査により、本研究の中心的な課題の一つである、煤煙対策の推進への抵抗がどのように行われたかについての事例研究について進展させることができた。シェフィールドとリヴァプールのカウンシルが活発に煤煙排出の取り締まりを行ったこと、しかし技術的対策を行っても必ずしも訴訟を回避できないことや一方的な訴訟手続きへの反発が工場経営者や蒸気船所有者による不満の表明につながったことを確認した。また、その不満の解消のために火夫の責任をより強調するようになったこと、また行政との交渉が行われ、行政側は表向きは原則的に譲歩しない姿勢を見せながらも、実質的には譲歩していた部分があることも確認した。この結果を比較研究として論文にまとめたが、コメントを得て、現在修正中である。 先行研究でも汚染者の抵抗を扱っているが、集会が開かれるまでに不満が表面化した事例があること、またその不満が行政との交渉につながり、行政の煤煙対策に修正を迫る部分があったことは、本研究で新たに確認した側面である。汚染問題一般において、汚染者が対策に抵抗することは知られており、実際、鉛、水銀、その他化学物質の汚染問題において、どのように汚染者が抵抗したかは多くの研究がある。しかし、より多くの産業が汚染源となる問題で、対策が困難な場合の抵抗や交渉については、20世紀の大気汚染や気候変動問題の研究があるものの、異なる歴史的・社会的文脈での事例研究をさらに行うことが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症のため、当初計画していたイギリスでの史料調査を2020年3月分から2022年3月分まで中止した。その間、アクセスできる史料を用いて当初の計画とは異なる、死亡者統計と煤煙の健康被害の認識の関係について研究を行い2021年度に成果を発表した。一方、当初計画していた煤煙対策の技術がどの程度安定していたかという研究と、技術が安定していなかった場合、どのような認識がなされたかという研究については十分に進めることができなかった。ただし、煤煙対策の技術の信頼性については、十分な確証は得られていないものの、十分に性能を発揮しなかった場合があることを示唆する史料を収集している。その上で、工場経営者らがどのようにこの状態を認識し状況に対応したかについて、シェフィールドとリヴァプールの事例研究として研究を進めてきた。 2022年度に調査を再開することができたので、順番は前後するが、シェフィールドとリヴァプールの事例研究をまとめた。しかし、他のイギリスの都市と比較したこれらの事例研究の位置づけが不十分とのコメントを得て、現在論文を修正中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は三年間の研究計画だったが、新型コロナ感染症のため五年間に延長している。2023年度は最終年度にあたり、これまでの研究をまとめる計画である。上述のシェフィールドとリヴァプールの事例研究の論文をまとめて発表するとともに、煤煙対策技術の性能について評価し、他の煤煙対策がなかったかを論ずる研究をまとめることを計画している。
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Report
(4 results)
Research Products
(4 results)